山本登朗『伊勢物語の生成と展開』(笠間書院)

5月下旬の刊行予定です。
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山本登朗『伊勢物語の生成と展開』(笠間書院)
ISBN978-4-305-70829-8 C0095
定価:本体11,000円(税別)
A5判・上製・カバー装・476頁
業平が創造した物語は、どのように継承され、豊かな世界を築き上げてきたのか。
成立論、作品論、享受史論など、多様な視点から探究。日本神話、中国説話、絵画資料ほかの、さまざまな材料を用いて通説を再考し、本来の正しい理解を探索する。各論が多様に連環し、伊勢物語の総体を描き出す。
【……業平が生前に、「ある形の伊勢物語」を、どこまで、どのような形で書き終えていたかを示す資料は残されていない。だが、九世紀後半の貴族社会や宮廷を驚かせたと思われるそのきわめて印象的な作品は、……古今集の詞書からもうかがわれるように、高い評価とともに次の時代に読み継がれ、さらには人々によって新しい章段が次々と書き加えられることによって、姿を変えつつ後代に継承されてゆくことになったと考えられる。その新しい章段の増益は十世紀後半まで続き、やがて伊勢物語は現行のものに近い姿となったと考えられるが、それらすべての根元は、天才的な才能によって新しい画期的な作品世界を創出した、在原業平という人物から始まったと考えられるのである。】……「第一章 物語の始発」より
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■著者紹介
山本登朗
(やまもと・とくろう)
昭和24年大阪府生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。京都光華女子大学教授、京都光華中学校・高等学校長(兼任)などを経て、現在、関西大学文学部教授。博士(文学)関西大学。
著書に『伊勢物語論 文体・主題・享受』(笠間書院、平成13年)、『伊勢物語古注釈大成』(既刊5巻、笠間書院、平成17年〜、責任編集)、『伊勢物語 成立と享受(1虚構の成立・2享受の展開)』(竹林舎、平成20〜22年、編著)、『伊勢物語版本集成』(竹林舎、平成23年、編著)、『日本を愛したドイツ人 フリッツ・ルンプと伊勢物語版本』(関西大学出版会、平成25年、編著)、『日本古代の「漢」と「和」 嵯峨朝の文学から考える』(勉誠出版、平成27年、共編著)、『絵で読む伊勢物語』(和泉書院、平成28年)ほか。
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【目次】
はじめに
第一章 物語の始発
一 在原業平と伊勢物語の始発
1 古今集と伊勢物語
2 物語作者としての在原業平
3 二条后と在原業平
4 業平の官歴と卒伝
5 業平の死と伊勢物語
二 在原業平と「神代」–伊勢物語の日本神話–
1 「ちはやぶる」の歌
2 「大原や」の歌
3 万葉集の「神代」
4 「神代」と仙界
5 伊勢物語の虚構と「神代」
6 斎宮章段の性格
7 住吉の神の出現
第二章 伊勢物語の方法
一 伊勢物語「初冠」考
1 伊勢物語初段の「初冠」
2 物語と元服
3 元服という儀礼
4 『歩飛烟』と伊勢物語
5 「初冠」が意味するもの
6 官人伝奇小説としての伊勢物語
二 「いちはやきみやび」–伊勢物語の草子地–
1 初段の草子地
2 草子地の種類と語り手の位置
3 「いちはやし」と「すく」
4 「嫌退比興之詞」
5 「いちはやきみやび」の意味
三 段末注記という方法–伊勢物語と毛詩–
1 伊勢物語第六段の構造
2 毛詩(詩経)の方法
3 伊勢物語第六段と毛詩
4 第六段以外の段末注記
5 伊勢物語の変貌
6 虚と実
四 「かれいひ」の意味–伊勢物語第九段・八橋の場面をめぐって–
1 珍しい食事場面
2 下馬の理由
3 涙のための伏線
4 伊勢物語の誹諧
五 伊勢物語の「みちのくに」–「歌さへぞひなびたりける」–
1 万葉集歌の利用
2 虚構の「みちのくに」
3 交流不能の世界
六 仙査説話の意味–伊勢物語第八十二段をめぐって–
1 伊勢物語の仙査説話
2 惟喬親王と神仙世界
3 侍宴歌と神仙世界
4 神話世界と神仙世界
七 沈黙と死–初冠本伊勢物語の結末–
1 はじまりとおわり
2 臨終歌の特異性
3 定家本第百二十四段の表現形態
4 孤独と沈黙
5 沈黙と死
第三章 恋愛譚としての伊勢物語–中国説話との関わり–
一 仙女譚から伊勢物語へ–「かいまみ」を手がかりに–
1 歌物語の原型
2 伝奇小説の「かいまみ」
3 仙界の美女
4 万葉集から伊勢物語へ
5 他者としての女性
二 「女歌」と『遊仙窟』
1 反発的に詠み返す「女歌」
2 『遊仙窟』受容の変化とその背景
三 中国の色好み–韓寿説話と伊勢物語第五段–
1 「ついひぢの崩れ」
2 韓寿の説話
3 韓寿説話から伊勢物語へ
4 色好みの女性像
四 王朝物語と宮廷秘話–第六十五段成立の意味–
1 密通を期待する帝
2 帝の妻への懸想
3 伊勢物語の宮廷秘話
4 年中行事と恋
5 密通という主題
五 伊勢物語の成熟期–第六十五段とその周辺–
1 「恋せじといふ祓(はらへ)」
2 第六十五段の虚構性
3 虚構世界の創出
4 詠作事情の創作
5 伊勢物語の虚構と私家集の虚構
6 『業平集』の性格
第四章 解釈をめぐって
一 高安の女–第二十三段第三部の二つの問題–
1 絵が伝えるもの
2 「かいまみ」としての理解
3 読解の変化
4 「けこ」の問題
5 真名本と古辞書
6 『窓の教』の「けこ」
7 正しい解釈
8 伝承の世界
二 「高安の女」補遺–平安末期における「けこのうつはもの」–
1 前節の過誤
2 殷富門院大輔の一首から
3 万葉集享受と伊勢物語
4 伊勢物語と『唐物語』
5 さまざまな享受史
三 「春別」と「春の別れ」–第七十七段の問題点–
1 「春の別れ」という言葉
2 釈迦の涅槃
3 三月尽
4 三種の理解
5 漢語と和語
6 あり得ない涅槃説
7 なお残る問題点
8 特異な表現
四 「千尋あるかげ」–第七十九段をめぐって–
1 「かげ」と「たけ」
2 典拠についての疑問
3 「仙家の竹」の淵源
4 白居易詩の「千尋」
第五章 伊勢物語から源氏物語へ
一 伊勢物語と「準拠」
1 第六段の段末注記
2 段末注記の機能
3 段末注記と「準拠」
4 伊勢物語と源氏物語
二 朧月夜と伊勢物語
1 朧月夜と二条后
2 朧月夜の涙
3 伊勢物語の女性像と朧月夜
4 身をあやまった女たち
5 朧月夜以前から朧月夜以後へ
第六章 伝説と享受
一 謡曲「井筒」の背景–櫟本(いちのもと)の業平伝説–
1 石上(いそのかみ)の在原寺
2 櫟本の伝説
3 石上と櫟本
4 伝承と注釈
5 本光明寺の存在
6 人丸と業平
二 「古注」前史–平安末期の伊勢物語享受–
1 謡曲「井筒」の淵源
2 「人麿の墓」と「中将の垣内」
3 伊勢物語第二十三段と第十七段
4 伝承から「古注」へ
三 古注釈とその周縁–『伊勢物語宗印談』をめぐって–
1 謡曲「井筒」の背景
2 特異な注釈世界
3 注釈書と伝承
4 周縁の享受
四 吉田山の業平塚
1 後一条天皇陵と業平塚
2 伊勢物語第五十九段
3 業平塚の来歴
4 業平塚と陽成天皇陵
第七章 注釈書と絵画
一 講釈から出版へ–『伊勢物語闕疑抄』の成立–
1 『伊勢物語闕疑抄』の位置
2 『闕疑抄』と『惟清抄』
3 『闕疑抄』の「御説」
4 智仁親王の聞書と『闕疑抄』
5 『伊勢物語闕疑抄』の成立
6 貴顕と出版
二 伊勢物語の享受史と絵画–第二十四段の場合–
1 前半部の解釈
2 「異本伊勢物語絵巻」における絵画化
3 室町時代後半の絵巻絵本
4 室町時代後期における解釈
5 岩佐又兵衛の視点
三 伊勢物語の絵巻・絵本と絵入り版本–地下水脈の探求–
1 「チェスター・ビーティー図書館本系統」の発見
2 もう一つの発見
3 物語と段末注記―絵入り版本の地下水脈①―
4 その他のつながり―絵入り版本の地下水脈②―
5 背負わない芥川―版本の新展開と地下水脈①―
6 開かれた「くら」の扉―版本の新展開と地下水脈②―
7 初紅葉を拾う―版本の新展開と地下水脈③―
四 嵯峨本から整版本へ
1 絵巻・絵本の歴史
2 嵯峨本伊勢物語の出現
3 嵯峨本と商業出版–慶長十四年古活字本刊語考–
4 古活字本から整版本へ–整版本刊語の性格–
5 整版本の伊勢物語理解
6 書き入れ–テキストとしての享受–
7 絵の自立へ
8 伊勢物語の版本と絵本
初出一覧
あとがき
索引(人名・書名・事項・和歌)