« 中央区立郷土天文館 企画展「江戸の装いと出土遺物」(2017年2月4日(土)〜3月20日(月・祝)) | メイン | 楽劇学会例会 第94回例会(2017年2月20日(月)、法政大学市ヶ谷キャンパス富士見ゲート G401教室) »

2017年1月31日

 記事のカテゴリー : 学会・講演会・展覧会情報

●横光利一文学会 第16回大会(2017年3月11日(土)、日本大学商学部 砧キャンパス(2号館二階2206教室))

このエントリーをはてなブックマークに追加 Clip to Evernote Share on Tumblr LINEで送る

研究会情報です。

●公式サイトはこちら
http://yokomitsu.jpn.org

--------------------

第16回大会
2017年 3月 11日(土) 14:00
日本大学商学部 砧キャンパス(2号館二階2206教室)

◇開会の辞
横光利一文学会代表  佐藤健一

◇研究発表
大川武司  横光利一「御身」の同時代性に関する一考察
 日露戦争後から大正期にかけて日本の権力構造は大きく変容していった。その一つの指標として天皇機関説論争があげられる。憲法の解釈をめぐって美濃部達吉と上杉慎吉との間で交わされた論争が指し示すのは、「国体」という超越的な存在が、少なくとも大正期においては重きをなさなかったという事実である。超越性なき権力はここに浸透の機会を得るわけだが、以上の時代認識を前提として、横光利一の作品「御身」を読むというのが、本発表の目論見となる。
 作品と大正期に登場した新たな権力との関連でいうと、主人公(末雄)の姪(幸子)が「種痘」を受ける場面がちょうどそれに当る。「種痘」は、M・フーコー(『安全・領土・人口』)が、「人口」を対象として作用する権力(生政治)の代表例としても挙げているが、主人公が「姪が汚くなるような気がした」と嫌悪感を表明している点が、まずは一つ目の読みのポイントとなる。
 次いでポイントとなるのは、主人公が姪に対し発する「御身よ」という敬称での呼びかけである。作内でこの呼びかけは、自分の意のままにならない姪への言葉として二度繰り返されるが、重要なのは「御身よ」と呼びかけられる対象が、病気や事故によっていつ死んでもおかしくない弱い存在であるという点である。それからさらに重要なのは、それが敬称で呼ばれているという点である。この二点は、ちょうど作品(「御身」)が書かれた頃、日本人であれば誰もが知っていた病弱かつ尊い人物を呼び寄せる。この呼び寄せにおいて「御身」は〈大正的〉と呼ぶにふさわしい作品となる。
 本発表における「御身」の読みと位置づけは、大正期との関連を探るものだが、これは後に「国体」イデオロギーが回帰してくる昭和十年代における横光作品(「旅愁」や「厨房日記」「微笑」など)を読み直す契機にもなると考えている。
中井祐希  横光利一とベルリン・オリンピック
 『旅愁』第一篇・第二篇(改造社、一九四〇年六・七月)がパリを主な舞台としているせいか、横光利一の欧州体験も「ヨーロッパ=パリ」という図式で理解されがちであった。トラベル・ライティング(=紀行文)である『欧州紀行』(創元社、一九三七年四月)の先行研究を概観すれば、横光が長期滞在していたパリに比重を置いた論考が多数見られる。しかし、昨今ではわずかな間だが訪れたイタリアやハンガリー、また訪れることが叶わなかったスペインやアメリカについても注目していく必要があるのではないかといった論点が提出されている。
 本発表では横光のドイツ体験、特にベルリン・オリンピックに注目する。横光の欧州体験にとって大きなターニング・ポイントになったからである。『欧州紀行』を見ていけば、ベルリンに向かう着前の七月二〇日、横光はこれまでのパリ生活を振り返り「私といふ一個の自然人が、この高級な都会の中へ抛り出され、形成されてゆく心理の推移を、偽りなく眺めるのが目的である」と総括した。しかしベルリン到着後の七月三〇日、次回のオリンピック開催地が東京に決定する。日本国内では号外が配られるほどの熱狂ぶりであったが、ベルリンにいた日本人達は「どことなく誰もがつかりしてゐる」様子を横光は書き記している。翌日七月三一日にも、「カフェーに坐つてゐると、ボーイはわれわれの卓の上に日の丸の旗を置くといふ始末だ。外国の客たちは一斉にわれわれの方を見る。昨日から大舞台に出てゐるやうで少少うるさい」とある。否応なく日本人として見られていく様子が描かれている。〈一個の自然人〉から〈日本人〉への変化、言い換えればまなざしを向けるだけだった観光者から日本の代表者としてまなざしを受けざるを得ない立場へと変化していった。
 日本の代表者という期待を背負わざるを得なかった状況、加えてナチス・ドイツの思惑が強く反映されたオリンピックやベルリンの都市の様子をリアルタイムで体感している点は注目に値する。国内の言説だけに留まらず、海外の言説も重ね合わせながら、横光の視線とその特異性、また認識の変化を浮き上がらせていく。そしてどのように文学表象、特に『旅愁』へと展開されていったのかについて論じていく。

◇講演
宮沢章夫氏  時間のかかる読書
 宮沢章夫氏プロフィール
 劇作家・演出家・小説家。1980年代半ば、竹中直人、いとうせいこう等とともに 「ラジカル・ガジベリビンバ・システム」を開始、すべての作・演出を手掛ける。90年「遊園地再生事業団」の活動を始める。
 93年『ヒネミ』で第37回岸田國士戯曲賞受賞。2010年『時間のかかる読書』で第21回伊藤整文学賞を受賞。
 『ニッポン戦後サブカルチャー史』(NHK出版)他著書多数。

◇閉会の辞
横光利一文学会運営委員長  掛野剛史

◇総会
大会前11時(予定)から『横光利一研究』14号の合評会を行います。

大会終了後、懇親会を砧キャンパス内食堂でおこないます。当日、大会会場受付にてお申込みください。


●グーグル提供広告