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2016年7月 6日

 記事のカテゴリー : 新刊案内

●佐々木孝浩『日本古典書誌学論』の推薦文公開。野口契子[アメリカ・プリンストン大学東アジア図書館日本研究司書]「世界の研究者、司書に向けて書誌学の重要性を啓発」/渡部泰明[東京大学教授]「わが導き手」。パンフレットPDFも公開。

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佐々木孝浩『日本古典書誌学論』(笠間書院)の推薦文を公開いたします。
同時に本書のパンフレットもPDFで公開いたしました。

TheBibliographicalStudy.jpg

URLは以下。
http://kasamashoin.jp/shoten/978-4-305-70808-3_ad.pdf

加えて、本書の英文目次・要旨も下記サイトで公開しています(スクロールして下の方です)。
http://kasamashoin.jp/2016/05/post_3667.html

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■推薦文

世界の研究者、司書に向けて
書誌学の重要性を啓発

野口契子 [のぐち・せつこ]
アメリカ・プリンストン大学東アジア図書館日本研究司書


 『日本古典書誌学論』は、長年書誌学に重点をおいて古典籍を研究してきた著者の研究を纏めたものである。「書誌学」は、文化の発展に伴い多様化しているが、北米ではデジタル・ヒューマニティーズ(人文学におけるデジタル技術の利用)の発達に伴い、その重要性が再認識されている分野でもある。従来の書誌学に加えて科学的な分析・考証に重きが置かれるとともに、最近では本の歴史や印刷文化についての講義や研究会を今まで以上に多く目にする。北米に所在する日本の古典籍においても、近い将来デジタル化が進み、国際的なプロジェクトに繋がる可能性も高い。当然書誌学的な考証・分析が求められるわけだが、多くの本を検証することのままならない私達は、とかく入手できる範囲の情報に頼り判断を下しがちである。本書の「あとがき」で、著者は「書誌学を疎かにした研究を行うと真実に辿り着けない」としているが、本著で紹介された研究は、具体的な分析方法を示すとともに、警鐘をも与えるものである。諸本と相対する前に、是非目を通しておいてほしい。
 本書は、序編を含む六編で構成され、計十八編の単著を所収する。五六〇頁に及ぶ厚みのある一冊は、古典文学を研究する上での書誌学の重要性を啓発する著者の声であり、いわば国文学研究に一石を投じるものである。
 序編で和本の装訂、文字種、版式といった事項と内容との関連性について述べ、その上で、第一編で巻子装が冊子体に与えた影響、第二編で巻子装の歴史と位置づけ、及び著者の専門でもある歌書との関係へと続けている。また、第三編では『大島本源氏物語』と奥書の例に基づく書誌学の重要性、第四編で形態、題等の書誌情報から見る『平家物語』の種類、第五編においては『枕草子』や歴史物語の伝本の書誌学的考察と、具体的な方法を示しながら様々な論考を展開している。「書誌学」という観点から行われた、綿密な調査と分析から成り立つ研究はどれも奥が深く、かつ新鮮である。巻末に英文の目次と抄訳もある。国内はもとより、海外の研究者、司書にも推薦したい。


わが導き手

渡部泰明 [わたなべ・やすあき]
東京大学教授


 佐々木孝浩氏には昔から教導を得てきた。それは、柿本人麿の画像を供養する歌会である人麿影供のことであったり、鎌倉時代の歌壇のことであったり、さらには書誌学の指導法を伝授してもらったこともある。いずれも氏の研究の重要な分野であるが、このたび氏の近年の書誌学の成果が充実した大著としてまとめられたことを、学界においてもそうであろうが、なにより私個人として悦ばしく思っている。
 私が佐々木氏から学んだのは、その該博な知識からばかりではない。なにより、文学、とくに和歌にまつわる営為への氏のこだわりからといってよい。私は、和歌を営みとして捉えたいと思ってきた。その重要なヒントを佐々木氏から与えられたのであった。いやヒントだけではない。和歌史が持続してきた謎の一端には、たしかに人の行為があったのだと、後押しをされ続けてきたのだった。氏の独擅場たる人麿影供研究はその典型である。
 今回の『日本古典書誌学論』でも、本をめぐって人がどう動いていたか、その営為の中から多角的に書物の持つ意味を解明しようという志に貫かれているように思われる。もちろん書誌学は書籍に関する事実を大事にする学問だろう。ただし事実を探求せんとして客観性を保持しようとするあまりに、視点や方法が単一化し、ひいては視野狭窄に陥ってしまうというのは、分野を限らぬ、研究のもつ危険性といえよう。佐々木氏の研究は、おのずとそうした弊を免れている。人間の所業への果敢なまでの探究心があるからであり、それがあくない好奇心に支えられているからである。一言でいえば、人の匂いがするのである。
 しかも、取り上げられている書物は、勅撰和歌集・『源氏物語』・『枕草子』・『平家物語』・歴史物語といった古典を代表する作品群であり、本書の意図の一つとして、文学と書誌学を架橋することが挙げられているのも、たしかにとうなずける。佐々木氏は、自身の研究の営みを総動員して、書物をめぐる営為の謎を解き明かそうとする。その意味で本書は、氏のこれまでの研究の集大成でもあるといえよう。志の高い本である。


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