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2015年2月 9日

 記事のカテゴリー : 新刊案内

●吉田幹生『日本古代恋愛文学史』(笠間書院)

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3月上旬刊行予定です。

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吉田幹生『日本古代恋愛文学史』(笠間書院)
ISBN978-4-305-70759-8 C0091
定価:本体8,800円(税別)
A5判・上製・カバー装・464頁

〈待つ女〉の誕生と展開

歌垣を出発点に源氏物語後の平安後期物語手前まで
深化する文学の流れをとらえる。

男の愛情を肯定する男性作家による時代から
不信感を増大させる女性中心の文学へ。

最終的に〈執着〉という男女共通の苦悩へ至る道筋を読み解く。

作品の微細な表現分析と巨視的な構想把握を駆使して描く
まったく新しい文学史。

中国文学と接することで倭は抒情表現を獲得し、挽歌、相聞歌が生まれた。歌垣を始原とする古い時代の相聞歌は対詠性が強く機智的な言葉の応酬であったが、人麻呂歌集は一首単独で採録し、内省的な抒情歌の発達につながっていく。人麻呂は石見相聞歌などにて恋人や配偶者の不在を嘆き、恋する感情を直接的に表現するのではなく、逢えない悲しみを強調する道も切り拓いた。
内省化を進める恋愛文学は、特に女性を主体としたときに相手の心変わりという問題を手繰り寄せることになり、『万葉集』から『古今和歌集』へと引き継がれる。それを背景に造型されたのがかぐや姫の人物像である。
『竹取物語』では愚かしいまでの人間の恋心が浮き彫りにされつつも、『伊勢物語』『落窪物語』とともに男の愛情を最終的には肯定的に描いていた。反対に『蜻蛉日記』では男の心が頼りにならないことを突き詰めていく。
一方で『うつほ物語』は初めて男の一途な恋心がもつ負の側面を顕在化させた。これ以前は好色さが非難されることはあったにせよ、恋心じたいが反省的に捉え返されることはなかった。さらに進んだ『源氏物語』では、女たちが自らに向けられた男の執着とどう向き合うのかという課題が浮上する。
恋する人間は救われるのかーー『源氏物語』は恋の妄執に取り憑かれた男女の苦悩をさまざまに描き込んだが、ついにその救済を描くことはなかった。
十一世紀以降の恋愛文学史はそれを乗り越えることができず、恋心(恋愛)と道心(仏教)との対立の構図を潜在させながら停滞していく......

【六条御息所を「待つ女」と捉えたことを出発点として、私の研究は〈待つ女〉という文学的素材の誕生や展開を解き明かそうとする方向に向かうことになった。...額田王論や...『竹取物語』論はそのような展望のもとに書いたものである。そして...『蜻蛉日記』論を踏まえて、額田王歌─(大伴坂上郎女「怨恨歌」)─かぐや姫─道綱母─六条御息所という系譜を軸として、日本古代の恋愛文学史を記述しようと試みた...その後...人妻論を書いたあたりを契機として、私の研究は男の恋の問題にも関心を拡大していくようになる。その過程で、十世紀の恋愛文学史を構想していた頃...『うつほ物語』から『源氏物語』への展望を獲得することができた。そして...宇治十帖論を書く過程で、〈待つ女〉の展開をめぐって浮かび上がってきた〈我が心〉の問題と人妻論以降考えてきた男の恋心という問題とが、結局は執着という同じ課題に行きつくと考えるようになり、そこに古代の終焉=中世の始発を見届けたことでようやく「日本古代恋愛文学史」として一書をまとめる決心をしたのである。】(本書「あとがき」より)

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■著者紹介

吉田幹生(よしだ・みきお)

一九七二年 京都府生まれ
一九九七年 東京大学文学部卒業
二〇〇四年 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程退学
二〇〇五年 成蹊大学文学部専任講師
現在 成蹊大学文学部准教授 博士(文学)

論文・著書
「古今集研究史」(『古今和歌集研究集成』第3巻、風間書房、二〇〇四年)、「物語文学成立前史」(『国語と国文学』第86巻第5号、二〇〇九年)、「靫負尉と簾中の人影―松風巻試解―」(『歴史のなかの源氏物語』思文閣出版、二〇一一年)、「作中和歌の意味と機能―夕顔巻「心あてに」をめぐって─」(『文学』第16巻第1号、二〇一五年)など。
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■ご予約・ご注文は版元ドットコムで
http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-305-70759-8.html
または、直接小社まで、メールで info@kasamashoin.co.jp ご連絡いただいても構いません。またはこちらのフォームで、購入希望としてご連絡ください(書名・冊数・お名前・ご住所・電話番号を明記してください)。
http://kasamashoin.jp/mailform.html
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【目次】

はじめにー日本古代恋愛文学史の構想

序章 七世紀以前の恋愛文学

歌垣をめぐって/挽歌史をめぐって(一)/挽歌史をめぐって(二)/挽歌から相聞歌へ

第一篇 七・八世紀の恋愛文学

第一章 額田王と鏡王女の唱和歌
問題の所在/鏡王女歌の作歌時期/額田王歌の「間接性」/額田王歌試解/天智朝の額田王/鏡王女歌の題詞をめぐって/鏡王女歌試解/〈待つ女〉の歌として

第二章 人麻呂歌集の相聞歌―正述心緒を中心に―
はじめに/二三六九歌の訓/二三六九歌の意味をめぐって/恋の自己対象化をめぐって/人麻呂歌集の意義

第三章 石見相聞歌の抒情と方法
はじめに/妹見つらむか/第一歌群の構成/妹のあたり見む/第二歌群の構成/恋愛文学史上の石見相聞歌

第四章 『古事記』における男と女―いろごのみ再考―
ホヲリとトヨタマビメをめぐって/「いろごのみ」と『古事記』/雄略と赤猪子/『古事記』の男女観

第五章 『萬葉集』における「人妻」の位相
人妻ゆゑに/人妻と禁忌性/八世紀の「人妻」/平安和歌への展開/まとめ

第六章 異類婚姻譚の展開―異類との別れをめぐって―
多様化する異類婚姻譚/共同性から私的感情へ/「恋心」の発見/悲劇の構造/王朝物語史へ

第二篇 九・十世紀の恋愛文学

第一章 〈あき〉の誕生―萬葉相聞歌から平安恋歌へ―
はじめに/贈答歌と心変わりー七世紀の段階/二四五五歌をめぐって/「夢」の歌ー七世紀から八世紀へ/内省化と心変わりー八世紀の段階/〈あき〉をめぐる表現体系の成立ー八世紀から九世紀へ

第二章 『竹取物語』難題求婚譚の達成
問題の所在/妻争い伝承概観/菟原処女伝承をめぐって(一)/菟原処女伝承をめぐって(二)/桜児伝承・縵児伝承をめぐって/生田川伝説へ/かぐや姫の人物造型/難題求婚譚冒頭部の形式/求婚者たちの「心ざし」/「あはれ」と難題求婚譚

第三章 恋愛文学の十世紀
はじめに/『竹取物語』/『落窪物語』/『伊勢物語』/『蜻蛉日記』

第四章 〈人の心〉から〈我が心〉へ―『蜻蛉日記』論―
はじめに/上巻における道綱母/中巻における道綱母/鳴滝籠りの意義/下山後の道綱母/おわりに

第五章 〈しるしの杉〉と『蜻蛉日記』
問題の所在/伴信友の校訂本文をめぐって/古今集歌と「しるしの杉」/〈待つ女〉としての道綱母

第六章 仲忠とあて宮―『うつほ物語』論―
はじめに/仲忠の登場/あて宮の春宮入内/仲忠の「心ざし」/恋愛文学史上の『うつほ物語』

第三篇 恋愛文学としての『源氏物語』

第一章 夕顔巻の物語と人物造型
はじめに/夕顔の卑下意識/『源氏物語』と女の幸せ/夕顔の遊女性

第二章 六条御息所の人物造型―その生霊化をめぐって―
はじめに/転換点としての車争い/御息所という設定/〈待つ女〉としての六条御息所

第三章 六条御息所の照らし出すもの
六条御息所の特異性/六条御息所の〈我が心〉/『源氏物語』の女君として/恋愛文学史上の六条御息所

第四章 蓬生巻の末摘花
問題の所在/『源氏物語』と倫理観/蓬生巻の方法/陰画としての末摘花

第五章 若菜巻の紫の上―「世」への傾斜と「憂し」の不在―
紫の上像の基本形/「世」への傾斜/「憂し」の不在/「あはれ」の獲得/第二部の達成

第六章 男の執着と女の救済―宇治十帖の世界―
八の宮の選択/薫の人物造型/大君の結婚拒否/大君の内面叙述/薫と大君の物語/中の君への接近/浮舟登場/蜻蛉巻の薫/蘇生後の浮舟/再会する薫と浮舟

終章 十一世紀の恋愛文学―日本中世恋愛文学史へ―

『和泉式部日記』/平安後期物語/中世恋愛文学史へ

初出一覧・あとがき・索引(作品名・研究者名)


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