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2014年10月27日

 記事のカテゴリー : 新刊案内

●五十嵐日記刊行会『五十嵐日記 古書店の原風景―古書店員の昭和へ』【五十嵐智/河内聡子/中野綾子/和田敦彦/渡辺匡一編】(笠間書院)

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11月下旬刊行予定です。

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五十嵐日記刊行会『五十嵐日記 古書店の原風景―古書店員の昭和へ』(笠間書院)
ISBN978-4-305-70755-0 C0000
A5判・並製・カバー装・328頁
定価:本体2,400円(税別)

昭和28年、地方から一人上京し、
ひたむきに古書店で働く五十嵐青年の日常――。

早稲田で50年近い歴史を持つ、日本文学や日本史に強い古書店、
五十嵐書店を創業した五十嵐智氏の若かりし頃の日記。
19歳の時山形から上京し、神田の古書店南海堂で10年間働いた後独立した。
本書はその間の独立前夜の日記である。

日記の内容を助ける資料として、日記に登場する人名を索引形式で人名一覧にまとめたほか、関連資料として五十嵐家の家系図、五十嵐書店についての簡易な年表を付しました。
また、五十嵐氏が神田で独立した頃、その後、早稲田に古書店を開業した頃の、それぞれの時期の近辺の古書店地図も掲げています。南海堂から独立した古書店や関係の深い古書店は数多いですが、それらについては南海堂関係古書店の関係図を作成し、まとめました。

【......この日記が刊行されるにいたったのは、やはりその内容の魅力によるところが大きい。この日記には、別に書店員のめざましい活躍や珍しい取引が描かれているわけではないし、また、うがった批評や難解な思想が描かれているわけではない。
 しかしながら、地方から一人上京し、ひたむきに古書店で働く五十嵐青年の日々の記録には、故郷の家族とのやりとりや、つどって来る同郷者達の姿も含め、読んでいて不思議に引きつけられてしまう。また、今読めば信じがたいような光景や、笑いを誘うような出来事も少なくない。】......本書「はじめに」より

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■編者紹介

五十嵐日記刊行会

[刊行会メンバー]

五十嵐智(いがらし・さとし)
1934年、山形県出身。1953年上京、神保町にある古書店、南海堂書店で働き始め、1964年に独立し、南海堂分店五十嵐書店を開店。1968年に早稲田に移店。1970年には藝林舎の名義で出版事業を始めた。

河内聡子(かわち・さとこ)
1982年、宮城県出身。宮城学院女子大学非常勤講師。主要論文に「雑誌『家の光』の普及過程に見るメディアの地域展開」(『日本文学』58(4)、2009年)など。

中野綾子(なかの・あやこ)
1986年、埼玉県出身。早稲田大学教育学研究科博士課程。主要論文に「戦時下学生の読書行為」(『日本文学』61(11)、2012年)、「堀辰雄ブームの検証」(『日本文学』62(11)、2013年)、「戦時下学生の読書法」(『リテラシー史研究』(7)、2014年)など。

和田敦彦(わだ・あつひこ)
1965年、高知県出身。早稲田大学教育・総合科学学術院教授。著書に『読むということ』(ひつじ書房、1997年)、『メディアの中の読者』(ひつじ書房、2002年)、『書物の日米関係』(新曜社、2007年)、『越境する書物』(新曜社、2011年)、『読書の歴史を問う』(笠間書院、2014年)など。

渡辺匡一(わたなべ・きょういち)
1962年、東京都出身。信州大学人文学部教授。主要論文に「「関東元祖」俊海法印─松橋流の東国展開と地蔵院流─」(『中世文学と寺院資料・聖教』竹林舎、2010年)など。

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■ご予約・ご注文は版元ドットコムで
http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-305-70755-0.html
または、直接小社まで、メールでinfo@kasamashoin.co.jpご連絡いただいても構いません。またはこちらのフォームで、購入希望としてご連絡ください(書名・冊数・お名前・ご住所・電話番号を明記してください)。
http://kasamashoin.jp/mailform.html
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【目次】

はじめに―五十嵐書店と五十嵐日記●五十嵐日記刊行会

五十嵐日記[五十嵐智]

 昭和二八(一九五三)年六月〜昭和二九年四月
 昭和三〇(一九五五)年一月〜十二月
 昭和三一(一九五六)年一月〜十二月
 昭和三二(一九五七)年一月〜十二月
 昭和三三(一九五八)年一月〜十二月
 昭和三四(一九五九)年一月〜十二月
 昭和三五(一九六〇)年一月〜十二月
 昭和三六(一九六一)年一月〜十二月
 昭和三七(一九六二)年一月〜十二月

日記補遺―神田から早稲田へ●五十嵐日記刊行会

人名索引

関連資料
・古書店地図(神田)、(早稲田)
・五十嵐智氏年表(一九三四〜一九七〇年)
・五十嵐家 家系図
・市田家 家系図
・南海堂関係古書店

おわりに―残さなければならないもの、残したいもの●五十嵐日記刊行会
・南海堂書店について
・南海堂書店での修業
・当時の神田古書店街について
・休日のことなど

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【はじめに・全文掲載】※実物には写真2枚入ります。

●五十嵐日記刊行会

 五十嵐書店は、新宿区西早稲田で五〇年近い歴史を持つ古書店であり、日本文学や日本史の領域に特に強い。創業した五十嵐智氏が早稲田通りに店を構えたのは昭和四三(一九六八)年の事である。彼はその四年前、それまで働いていた神田の古書店南海堂から独立して古書業をはじめた。彼が郷里の松嶺町(現在の山形県酒田市)から上京したのは昭和二八(一九五三)年、一九歳の時であり、南海堂では十年の間、古書店員として働いていた事となる。

 本書は、五十嵐智氏が、南海堂の一店員として働きはじめた昭和二八(一九五三)年から、独立する少し前の昭和三七(一九六二)年までの日記である。五十嵐書店には、この一〇冊に及ぶ日記が残されており、昭和二九(一九五四)年の一冊を欠くものの、ほぼ毎日のようにその日記は記されている。

 五十嵐書店の歴史を調査し、記録していくためのグループがその活動をはじめたのは二〇〇九年五月の事である。古書店は近代の出版、読書環境をとらえていくうえで、貴重な場ではあるが、それらを対象として研究する明確な領域があるわけではない。調査グループでは、古書店の記録の遺し方、調べ方を含めて検討しながら調査を進めていった(▼注1)。

 四〇万字に及ぶ五十嵐日記だが、調査グループでそれらを一度忠実にすべて翻刻していった。分量的に、そのすべてを刊行する事は難しかったが、主だった日を採録し、注をつけ、できるかぎりもとの文体を生かしたまま用語や用字を読みやすく改めたのが本書である。

 この日記の最後の年は昭和三七(一九六二)年で、その二年後の三九年、五十嵐氏は南海堂から独立する。南海堂は、十年勤続した店員が新たに独立できるように、同じく神田に一時的な在庫と店舗を準備していた。そこから本格的に独立し、早稲田へと移るのが昭和四三(一九六八)年の事である。こうした経緯については、この日記の欠けている期間とともに後の「日記補遺」にまとめている。

 また、日記の内容を助ける資料として、日記に登場する人名を索引形式で人名一覧にまとめているほか、巻末に関連資料として五十嵐家の家系図、五十嵐書店についての簡易な年表を付した。また、五十嵐氏が神田で独立した頃、その後、早稲田に古書店を開業した頃の、それぞれの時期の近辺の古書店地図も掲げる事とした。南海堂から独立した古書店や関係の深い古書店は数多い。それについては南海堂関係古書店の関係図を作成し、やはり最後にまとめた。

 古書店についての、あるいは古書店主が書いた日記や書物は少なくない。古書店の歴史としても、神田の南海堂や、早稲田の五十嵐書店を含めた、東京古書籍商組合の歴史もまとめられているし、早稲田の古書店街の歴史をまとめた書物もこれまでに刊行されている(▼注2)。ただ、戦後の古書店で働く一人の店員のまなざしで、市場での仕入れから住み込みでの店員生活まで、その毎日を細かに記している点で、この日記は希有なものだと言えるだろう。

 ただ、この日記のそうした希少さや、歴史的な意味合いもさる事ながら、この日記が刊行されるにいたったのは、やはりその内容の魅力によるところが大きい。この日記には、別に書店員のめざましい活躍や珍しい取引が描かれているわけではないし、また、うがった批評や難解な思想が描かれているわけではない。

 しかしながら、地方から一人上京し、ひたむきに古書店で働く五十嵐青年の日々の記録には、故郷の家族とのやりとりや、つどって来る同郷者達の姿も含め、読んでいて不思議に引きつけられてしまう。また、今読めば信じがたいような光景や、笑いを誘うような出来事も少なくない。

 翻刻した日記を読み合わせ、不明な点や当時の事情を知るために、毎月のように調査グループでは五十嵐智氏から聞き取りを行っていた。日記を読み、その話を聞きながら過ごした時間は、参加した誰しもにとって楽しく、また驚きに満ちた時間でもあった。その思いを、この日記の刊行を通して多くの人々に届けられれば、と思う。


▼1 中野綾子「目録メディアと古書店空間」、渡辺匡一「早稲田古書店調査メモ」(『リテラシー史研究』第三号、二〇一〇・一)。
▼2 小林静生編『東京古書組合五十年史』(東京都古書籍商業協同組合、一九七四・十二)、向井透史『早稲田古本屋街』(未来社、二〇〇六・一〇)。


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