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2014年8月14日

 記事のカテゴリー : 新刊案内

●井上泰至『近世刊行軍書論 教訓・娯楽・考証』(笠間書院)

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9月上旬刊行予定。

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井上泰至『近世刊行軍書論 教訓・娯楽・考証』(笠間書院)
ISBN978-4-305-70739-0 C0095
A5判・上製・カバー装・304頁
定価:本体6,500円(税別)

近世期に刊行された、軍書の全体像を問う、初の書。
「娯楽」「教訓」「歴史」「軍学」の諸要素が渾然としていたため、
近世軍書は、近代的な制度である、
文学研究・思想史研究・倫理学研究・歴史研究の
どの研究分野からも継子扱いされてきた。
本書はそれらの諸分野を超え近世軍書の流れ、性格を考え、
小説史に果たしてきた役割を論じていく。

武士の生き方を教えた軍書は、
江戸時代の小説という「花」を生む「土壌」として見れば、
武士の歴史を語る、まことに養分の多い「沃野」であった――。

【......本書では、「近世に制作・刊行された和軍記・通俗史書・雑史・軍談」を「近世軍書」と定義する。本書が、近世小説の一部としての、あるいは近世小説の母胎の一つとしての「近世軍書」を対象にする以上、軍語りの書である「軍記」が核になることは疑い得ない。しかし、近世に生産された軍記は、それを生みだした近世軍学を念頭に置かざるを得ないし、軍語りと軍学書の色彩が渾然一体とした『甲陽軍鑑』や『太平記秘伝理尽鈔』などの書物、あるいは『本朝通紀』のような軍記を漢文化した通俗史書をもはじき出さないことで、近世当時の「軍書」の制作・流通・受容の実態が見えてくるはずだからである。
 むしろ、十七世紀前半には教訓と娯楽が渾然一体としていた軍書の在り方が、十七世紀後半になって出版ベースに乗っていくうちに通俗歴史読み物として一旦は定型化し、それが十八世紀という学問と文学の結婚の時代を迎えると、軍書が考証と娯楽と教訓に分化してゆく経過は、「軍書」の語を今日でいう「軍記」に限定しないことで明らかになってゆくのである。
 また、そういう軍書の変遷を見渡してみた時、小説の時代設定の取材源となる軍書との関わり方が、西鶴に代表される浮世草子の武家物と、秋成に代表される初期読本とでどう質的に異なるのかも見えてくる。歴史と文学は双子だと言われるが、その二つの「点」を結ぶ重要な「線」の一つが刊行軍書なのである。......「はじめに」より】

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■著者紹介

井上泰至(いのうえ・やすし)Inoue Yasushi

1961年、京都市生まれ。上智大学文学部国文学科卒。同大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。1989年防衛大学校助手、1991年同講師、1995年同助教授、2012年教授。2010年日本伝統俳句協会理事、2011年同常務理事。
近世文学専攻(特に上田秋成・武士の文学・人情本)。博士(文学)。

著書に、『雨月物語論源泉と主題』(笠間書院、1999)、『サムライの書斎江戸武家文人列伝』(ぺりかん社、2007)、『〈悪口〉の文学、文学者の〈悪口〉』(新典社新書、2008)、『江戸の恋愛作法』(春日出版、2008)、『雨月物語の世界上田秋成の怪異の正体』(角川選書、2009)、『恋愛小説の誕生ロマンス・消費・いき』(笠間書院、2009)、『春雨物語現代語訳付き』訳注(角川ソフィア文庫、2010)、『子規の内なる江戸俳句革新というドラマ』(角川学芸出版、2011)、『江戸の発禁本』(角川選書、2013)などがある。
共編著に、『改訂版雨月物語現代語訳付き』訳注(角川ソフィア文庫、2006)、『江戸文学41 軍記・軍書』責任編集(ぺりかん社、2009)、『秀吉の対外戦争変容する語りとイメージ前近代日朝の言説空間』金時徳と共著(笠間書院、2011)、『江戸の文学史と思想史』田中康二と共編(ぺりかん社、2011)、『春雨物語』一戸渉・三浦一朗・山本綏子と共著(三弥井書店、2012)、『江戸文学を選び直す』田中康二と共編(笠間書院、2014)などがある。

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井上泰至『近世刊行軍書論 教訓・娯楽・考証』

【目次】

はじめに
 一 本書の対象と目的
 二 本書の構成
 三 これまでの近世刊行軍書研究

第一章 ◉ 近世刊行軍書の全体像

第一節 近世刊行軍書の沿革
 一 近世刊行軍書の沿革―四つの時期
 二 武家支配の時代という歴史観
 三 史書の雅俗の間
 四 系図編纂による武家の格式化
 五 浪人という視座
 六 軍学の学問化
 七 読本へ

第二節 近世刊行軍書年表稿

 【凡例】
本編 1 大坂物語/2 信長記/3 天正記/4 甲陽軍鑑/5 太閤記/6 聚楽物語/7 北条五代記/8 太平記秘伝理尽鈔/9 甲乱記/10 関東軍記/11 嶋原記/12 平家物語評判秘伝抄/13 太平記評判私要理尽無極鈔/14 太閤軍記/15 武者物語/16 楠正成一巻書/17 楠兵庫記/18 源平軍物語/19 江源武鑑/20 本朝百将伝/21 本朝武家根元/22 京都将軍家譜/23 織田信長譜/24 豊臣秀吉譜/25 太平記大全/26 朝鮮征伐記/27 古老軍物語/28 甲陽軍鑑評判/29 佐々木軍記/30 浅井物語/31 楠氏二先生全書/32 清正記/33 三好軍記/34 将軍記/35 続撰清正記/36 東鑑(仮名)/37 楠正成伝/38 太平記綱目/39 鎌倉管領九代記/40 北条盛衰記/41 信玄軍談記/42 北条九代記/43 後太平記/44 義氏軍記/45 西国太平記/46 本朝武林伝/47 楠知命鈔/48 頼朝一代記/49 頼朝三代記/50 後太平記評判/51 南木武経/52 楠家伝七巻書/53 楠公桜井書/54 続太平記/55 川中島合戦評判/56 浅井三代軍記/57 塵塚物語/58 古戦茗話/59 残太平記/60 多田五代記/61 源平太平記評判/62 古戦得失論/63 前太平記/64 公武栄枯物語/65 北畠物語/66 蒲生軍記/67 本朝名伝略記/68 本朝武家高名記/69 賤箇嶽記/70 石田軍記/71 本朝通紀/72 九州記/73 本朝武家評林/74 総見記/75 土佐軍記/76 明智軍記/77 越後軍記/78 高麗陣日記/79 続合戦得失論/80 戸次軍談/81 義経記評判/82 筑紫軍記/83 宗像軍記/84 義経興廃記/85 朝鮮軍記大全/86 朝鮮太平記/87 武門不忘記/88 室町殿物語/89 東国太平記/90 和州諸将軍伝/91 北国太平記/92 菊池伝記/93 旧説拾遺物語/94 新武者物語/95 本朝三国志/96 南朝太平記/97 北国全太平記/98 重編応仁記/99 北越太平記/100 西国盛衰記/101 九州軍記/102 木曽将軍義仲記/103 義経勲功記/104 陰徳太平記/105 新編東国記/106 源氏一統志/107 合戦高名記/108 信州河中島五戦記/109 諸家高名記/110 南海治乱記/111 四海太平記/112 曽我勲功記/113 前々太平記/114 諸家前太平記/115 楠一生記/116 本朝諸家勲功記/117 曽我物語評判/118 武将感状記/119 甲越戦争記/120 北条太平記/121 義貞勲功記/122 鎌倉実記/123 武家俗説弁/124 織田真紀/125 武家忠臣記/126 武田三代軍記/127 中国太平記/128 三楠実録/129 武家高名故事/130 豫陽河野盛衰記/[刊年不明作品] 131 鎌倉将軍家譜/132 楠軍物語

第二章 ◉ 読み物的刊行軍書の成立と展開―付、西鶴小説との関係

第一節 寛文期仕官軍学者の写本軍書―『慶長軍記』『朝鮮征伐記』
 一 雑種の魅力
 二 『慶長軍記』の作者植木悦
 三 教訓と和漢の故事引用・比較
 四 浪人軍学者の存在証明
 五 軍師・預言者・怨霊―『太平記』的異伝
 六 大関本『朝鮮征伐記』の作者宇佐美定祐
 七 軍談色1―長口舌の魅力・「実は」の方法
 八 軍談色2―カリスマのイメージ・英雄への同情
 九 平時の管理者に求められる英雄像
 十 非文学的側面
 十一 御伽衆的軍学者から理論的な軍学者へ

第二節 読み物的刊行軍書の確立―『北条九代記』を中心に
 一 寛文・延宝という時代
 二 長編読み物化以前―『甲乱記』
 三 長編読み物化の典型―『北条九代記』
 四 近世的説話の挿入―北条時頼・貞時・青砥藤綱
 五 ノスタルジーとしての武辺話
 六 当代の体制の鑑

第三節 読み物的刊行軍書の展開―遠山信春の軍書制作
 一 長編歴史読み物と史伝的軍書
 二 遠山信春と小林正甫
 三 遠山信春(小林正甫)の事跡
 四 『総見記』まで―『増補信長記』の成立
 五 史伝的軍書―『増補信長記』の特徴
 六 軍談化―『総見記』の特徴
 七 考証的軍書へ―『重編応仁記』
 八 令名の記録への志向―私的動機

第四節 読み物的刊行軍書から通俗史書へ―『本朝通紀』を例に
 一 『本朝通紀』の成立と評価
 二 『本朝通紀』の素材
 三 『本朝通紀』の独自性
 四 『本朝通紀』の位置

第五節 西鶴武家物と刊行軍書―『武道伝来記』への一視角
 一 中村幸彦説への疑問
 二 「敵討」より「武道」が核の作品
 三 「武道」という言葉の来歴
 四 「武道」の知仁勇と西鶴
 五 「武道」の語義の変化の兆し
 六 『武道伝来記』の「武道」の諸相
 七 出頭者への風刺
 八 主題としての勇の「武道」
 九 勇武を発揮できない制度への風刺
 十 談理(教訓)と風刺は矛盾せず

第三章 ◉ 娯楽と考証への分化―付、初期読本との関係

第一節 通俗刊行軍書作家馬場信意の執筆態度―『朝鮮太平記』を例に
 一 唯一の軍書作家
 二 豊富な情報
 三 対外認識と自国意識
 四 人物中心の歴史
 五 歴史小説に近い歴史読み物

第二節 偽書的刊行軍書の諸問題―『東国太平記』を例に
 一 作者についての証言
 二 『石田軍記』など取材源
 三 序文の粉飾
 四 宇佐美関係書と『東国太平記』
 五 秋成の『東国太平記』利用
 六 軍書の世界のもどき

第三節 軍学の学問化と軍書制作―文禄・慶長の役関係軍書における小早川隆景像

 一 なぜ隆景か
 二 勇猛なる老将
 三 軍談の語り口
 四 歴史的事実から遡る
 五 将の理想像
 六 上杉流軍学者の軍談
 七 武田流軍学者
 八 戦略家隆景
 九 戦争の批判者として
 十 朝鮮側の受容
 十一 残された課題

第四節 享保以降の軍書の傾向と読本の時代設定
 一 読本のロマンの前提
 二 義経大陸渡海説の「考証」
 三 考証の季節
 四 考証された軍書の実際
 五 敗者の生存・流転・復活
 六 小説的意識の醸成

第五節 庭鐘読本と軍書
 一 様式論の定義
 二 様式論から見た軍書と読本
 三 軍書の語りの流入
 四 内容の類似
 五 近世的楠像の揺曳
 六 軍書との距離
 七 草子屋系小説と書物屋系小説の結婚

第六節 『雨月物語』の時代設定と主題
 一 時代認識への影響
 二 史論の話法への影響
 三 史観への影響
 四 「菊花の約」挿絵の背景
 五 預言の話法への影響
 六 軍書をもどく

補 説 鳩と白龍―『八犬伝』と源氏神話
 一 時代認識への影響
 二 源氏の先例
 三 白龍の正体
 四 源氏神話の展開

おわりに

初出一覧
あとがき
主要人名索引
主要書名索引


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