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2014年5月 7日

 記事のカテゴリー : 新刊案内

●高橋新太郎セレクション3『集書日誌・詩誌「リアン」のこと』(笠間書院)

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6月下旬の刊行予定です。

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高橋新太郎セレクション3『集書日誌・詩誌「リアン」のこと』
ISBN978-4-305-60043-1 C0093
A5判・上製・カバー装・267頁
定価:本体3,000円(税別)

没後10年。
変遷する時代の研究動向とは距離をとりながら、独自の存在感を持った方法論を打ち立てた、独創的な国文学者、高橋新太郎の仕事を、今、振り返る。全3冊のシリーズ。

第3冊目『集書日誌・詩誌「リアン」のこと』は、『彷書月刊』に1988年5月から2000年12月まで「書架より」「集書日誌」として連載し続けたものを収め、併せて詩誌「リアン」関連の考察を収めた。
文学者たちは、戦中・戦後の困難のなかを、いかに生きたのか。
「集書日誌」は『日本古書通信』の「雑誌探索ノート」とは一転、かろやかな筆致のエッセイの趣である。そのものずばり「集書日誌」である。膨大な古書を媒介に、書物や雑誌そのものに「近代日本文学」の虚実を語らせ、読者を、変遷する時代の坩堝に誘う。
詩誌「リアン」(『Rien』)は〈左翼解体期〉に〈小規模ながら反ファシズム文化運動を独自に持続させた〉として、高橋氏がその重要性を説いていた詩誌である。
解説・松村良[駒沢女子大学特任教授]。【推薦】紅野謙介・安藤宏・十重田裕一。

【「科学的超現実主義」を推唱し、アラゴンらの思想的転換と軌を一にしながら、左翼運動解体期にパルタイに距離をおきつつ主体的に自己の芸術弁証法詩論を対置し、屹立してゆく方法論的営為と思想誌の実験は、異色かつ貴重であり、小規模ながら独自に反ファシズム芸術運動を戦後にまで持続させた「リアン」グループと、その中核たる竹中の仕事は、今後の近代詩史に正当に組みこまれるべき実質と栄誉をもつ。】...高橋新太郎「竹中久七論―「リアン」芸術運動の旗手」より

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■著者紹介

高橋新太郎(たかはし・しんたろう)

1932年5月5日生まれ。1960年、学習院大学大学院人文科学研究科修士課程修了。1969年、学習院高等科教諭。1982年、学習院女子短期大学国文科助教授。1983年、学習院女子短期大学教授。1990年、学習院女子短期大学図書館長。1998年、学習院女子大学教授、国際文化交流学部日本文化学科主任。2003年1月11日逝去(享年70歳)。2003年4月、学習院女子大学名誉教授。
著書に『杜と櫻並木の蔭で』(非売品。2004年7月30日、笠間書院刊)。
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■ご予約・ご注文は版元ドットコムで
http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-305-60043-1.html
または、直接小社まで、メールでinfo@kasamashoin.co.jpご連絡いただいても構いません。またはこちらのフォームで、購入希望としてご連絡ください(書名・冊数・お名前・ご住所・電話番号を明記してください)。
http://kasamashoin.jp/mailform.html
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■同時発売
高橋新太郎セレクション1『近代日本文学の周圏』
ISBN978-4-305-60041-7 C0093
A5判・上製・カバー装・416頁
定価:本体4,200円(税別)
http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-305-60041-7.html

高橋新太郎セレクション2『雑誌探索ノート―戦中・戦後誌からの検証』
ISBN978-4-305-60042-4 C0093
A5判・上製・カバー装・220頁
定価:本体2,800円(税別)
http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-305-60042-4.html

高橋新太郎セレクション3『集書日誌・詩誌「リアン」のこと』
ISBN978-4-305-60043-1 C0093
A5判・上製・カバー装・267頁
定価:本体3,000円(税別)
http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-305-60043-1.html

高橋新太郎セレクション1〜3・3冊セット
978-4-305-60044-8 C0093
定価:本体10,000円(税別)
http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-305-60044-8.html
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【目次】

凡例

番外1[書架より]フェノロサ氏演述 大森惟中筆『美術真説』のこと
番外2[書架より]掌珠―山内美穗著『羞手帖』『花くずし』
番外3[書架より]中島孤島著『小説 新気運』周縁
『彷書月刊』特集古書目録を読む―あるいは注文の仕方
番外4 桐生でボン書店本に出遭う
番外5 岡崎・刈谷行

集書日誌

0 非売の好著との出遇い
1 払出本のこと、その他
2 未来派? の百匙老先生
3 河合教授事件の裏文献
4 敗戦直後の海外邦字誌
5 『新時代』の谷口雅春
6 神田で三好十郎文献に出遭う
7 『赤』雑誌の「白樺派撲滅論」
8 気になるアナキズム詩人 植村諦―治安維持法違反公判調書
9 前衛詩人竹中久七の卒業論文
10 『平民新聞』の唐沢柳翁
11 戦後の金沢文化―旬刊『輿論』ほか
12 『金澤誠日記』抄と『純粋詩』
13 聯隊長の陣中日誌、その他
14 上海の『改造日報』紙―堀田善衛・輿論調査
15 中正革命を謳う戦後誌『菊旗』
16 敗戦後の愛書交換誌、その他
17 有島武郎文献と老いらくの恋
18 時代を映す雑資料―相対会・新吉原女子組合・水俣、その他
19 〈こんな女が何故出た〉銀月著『当世一百人』中の晶子
20 生方敏郎『ゆもりすと』第三号
21 『三好十郎論』と『田中英光私研究』
22 品川力と田中角栄―敗戦直後の越後タイムス
23 〈神戸詩人事件〉と関連詩誌―『滑車』・『以後』
24 戦後の岩手文化―『生活者』『女性岩手』
25 〈純正唯物論者〉の戦中日記
26 『その人を知らず』と明石順三の灯台社
27 『自由大学雑誌』と『警察協会雑誌』
28 『文藝学資料月報』と『日本近代文学研叢』
29 松本克平翁の死、『乙骨明夫文庫目録』など
30 中江篤介『維氏美学』訳稿と内田周平『美学』
31 戦時下の『放送報道編輯例』
32 警察官受験誌の「人民戦線」
33 一九四九年の〈アプレゲール〉総括
34 ローマ字論者南部義籌と向軍治
35 「神戸詩人事件」関連詩誌Ⅱ
36 古郵便切手蒐集の危害!― その他
37 明治改正刑法実施前後の人権状況
38 三好十郎訳注の『ピーター・パン』
39 『是丈は心得おくべし』と『や、此は便利だ』
40 「御嶽文庫」の戦後誌収集
41 個人臣民に自由なし―『宇宙』誌の自由主義批判
42 大隈伯主宰『新日本』誌の婦人問題
43 予言者宮崎虎之助の公娼=公妻論
44 吉本隆明、石原慎太郎登場の初心―『詩文化』と『一橋文藝』
45 学習院長田中光顕 幼年学生喫煙禁止の訓令
46 内閣情報部の「人民戦線運動」総括
47 『人民川柳』誌の柳壇戦犯論
48 皇紀問題、皇民団 亀井貫一郎 対決記録
49 歌謡界の八月十五日
50 教育と活動写真
51 昭和十年の『週刊時局新聞』―美濃部問題・学芸自由同盟
52 『文化聯合』と『新日本新聞』―「電気細工の新音楽」など
53 レッド・パージ文献と奥田美穗追憶
54 パンフレットに見る明治・大正・昭和
55 『国賊研究資料』と内田良平の大本教理解
56 十三人倶楽部と小金井打球会
57 一九三〇年の『日本を見る目』
58 松本克平宛献呈本『斬られの仙太』と合唱劇「満員列車」
59 南天堂書房発売の『文藝抗争』と第二文戦打倒同盟の『前線』
60 被災神戸「風狂目録」の集書―『民衆新聞』『SAKURA』外
61 松本学警保局長辞任の拠点―邦人社機関誌『邦人一如』
62 『閨秀新誌』と『エスペラント』
63 二・二六事件直後の『麹町憲兵分隊状況報告』ほか
64 同人雑誌の転変―『新文化』『文学草紙』『文学生活』
65 元陸軍造兵廠長官の汚職収賄事件
66 建築・都市工学関係雑誌からの収穫
67 『猥藝姦淫及重婚ノ罪早わかり』など
68 日本ファッシズム聯盟機関誌『ファッシズム』
69 『戦旗』『婦人戦旗』『コツプ』など
70 遺著二つ 福田久賀男『探書五十年』  佐藤幸子『私と生きた犬たち』
71 『戸籍質疑録』に見る明治の諸相
72 不戦条約文論争の向軍治
73 口舌と筆紙の言論規制―普選と二・二六
74 日本主義文化同盟誌『怒濤』『文化維新』
75 京阪神の戦後誌ほか―月の輪書林古書目録から
特集◆戦後廃刊雑誌 被占領下戦後雑誌の変遷


詩誌「リアン」のこと

竹中久七論―「リアン」芸術運動の旗手
詩誌『Rien』芸術運動の位相
竹中久七・マルクス主義への横断(『コレクション・日本シュールレアリスム⑧』)
解題・年譜・参考文献

解説・松村良
[付載]高橋文庫 捌書日誌

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【推薦文】

しのぎと抗い

紅野謙介(日本大学教授)


 高橋新太郎は三好十郎の転向問題に始まって、戦争責任にこだわり、戦時中の「日本文学報国会」や雑誌『文学報国』に着目し、詩誌『リアン』をめぐる研究に情熱を注いだ。川端康成などの作家研究もあるが、目論むところはひとすじ、政治にふりまわされる文学者たちの軌跡である。多く、こうしたテーマに関心を寄せるものはおのずとはったりが身につく。どうしても大仰な言葉が浮き立つ。高橋新太郎の文体にはそれが稀薄である。引用に語らせ、みずからは慎重に言葉を選んだ。
 生前、高橋はほとんど著書をまとめることなく、学習院という恵まれた、しかし特異な教育の場に身を置きながら、学界でも論壇でも裏通りを歩いているかのような処し方を貫いた。それは周囲からみて、ときに歯がゆいほどだった。学問が否応なくこの現実のなかで動く制度でもある以上、含羞の人ではいられない。だが、時は過ぎ去った。故人の人柄を慕うものたちによってまとめられたのがこの三巻である。いま改めて浮かび上がるのは、彼が背を向けながら資料に向かい、古書を並べて独語する言葉の数々である。なかでも『文学報国』をめぐる論文につけられた副題「しのぎと抗い」に目が向く。不本意な、苦しい状況のなかでどのように文学者は切り抜けようとしたのか。耐えて切り抜けるはずが相手に寄り添うことになり、支えているかのように見える立場に転じてしまう。ひとりの生活者でもある作家たちの一時だけの「しのぎ」がやがて生活の手段ともなり、血肉化することもあれば、静かな目立たぬ「抗い」と判別つきがたいふるまいともなる。高橋新太郎という書き手はそうした人の生の危うさに敏感に反応したのである。含羞の背後にあるものがちらりと見えた気がした。

* * *

小さな記憶が掘り起こされ、交響し、巨大な「歴史」を生む

安藤宏(東京大学教授)


 「文化研究」という言葉が耳に心地よく流通し、重宝される昨今だが、あたかもこのタームが使われる頻度に反比例するように、背後に必要とされる資料収集、文献実証の精神が希薄になりつつあるように思う。一つのテーマに都合のよい資料を、内のりにそって功利的に集めてきた研究は、たとえいかに扱う資料の数が多くてもどこかに胡散臭さが漂う。その意味でも「高橋新太郎セレクション」は、一見今日の研究動向にマッチするかに見えて、実はそれを根源的に批判するエネルギーを持っている。戦争犯罪にせよ、天皇制言説にせよ、「雑誌探索ノート」に用いられる資料はあらかじめそれらの目的にそって収集されたものではない。長い蓄積のうちに一堂に会した資料が関連領域の外に自ずと拡がりを見せ、それに立ち会うこと自体に淫しつつ、なおかつその眩暈と闘う中で、相互の意外なつながりが自得されてくる独自の「系譜学」なのである。この種の仕事は当然のことながら、いわゆる「論文」の形はとりにくい。忘れ去られていたはずの小さな記憶が一つ一つ掘り起こされ、相互に交響して巨大な「歴史」が生成されていくということ。その意味でも氏の仕事はこうした「セレクション」として示されるのが最もふさわしい。
 心からの敬意をもって、〝玩物有志〟の希有なる業績の集成を祝したいと思う。
                           
* * *

膨大な資料に基づく、時代と人をめぐる思考の軌跡

十重田裕一(早稲田大学教授)


 十年前、遺稿集『杜と櫻並木の蔭で--学習院での歳月』に接した際、高橋新太郎氏の文章をまとめて読んでみたいと思った。そうした希望を叶えてくれる待望の書物が、このたび上梓される運びとなった。
 「高橋新太郎セレクション」の三冊では、著者が生前に蒐集した書物や雑誌が紹介されるとともに、浩瀚な蔵書に基づく思索が展開されている。著者の関心は、近代日本において煩悶、抵抗、転向した人々や、時代を大きく揺るがす戦争、裁判、論争などの出来事に向けられていた。このセレクションには、膨大な資料を蒐集し、人が時代と格闘し、相渉ることの意味を真摯に問おうとした著者の姿勢が一貫してうかがえるとともに、その思考の軌跡が映し出されている。
 存在が忘却されることなく、没後十年の歳月を経て、最初の研究書が上梓されたことは、故人のみならず、学界にとっても僥倖である。人は亡くなってから後に、改めてその真価が問われるとすれば、高橋氏のそれは、この三冊からはじまる。


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