« 講演「朝鮮の侠客文化と近代の変容」講師:盧永九氏、公開トークイベント「海峡を越える忍者-日韓をつなぐ-」【荒山徹・金時徳・吉丸雄哉各氏】(2014年2月22日(土)、ハイトピア伊賀3階) | メイン | 国立国語研究所・NINJALフォーラム・第7回「近代の日本語はこうしてできた」(平成26年3月30日 (日)、一橋大学 一橋講堂、要申し込み) »

2014年2月21日

 記事のカテゴリー : 新刊案内

●永井一彰『板木は語る』(笠間書院)のパンフレットを作りました(PDFも公開)

このエントリーをはてなブックマークに追加 Clip to Evernote Share on Tumblr LINEで送る

永井一彰『板木は語る』(笠間書院)のパンフレットを作りました。

hangi.jpg

ご入り用の方は送料無料でお送りいたしますので、info@kasamashoin.co.jpまで、「『板木は語る』パンフレット希望」として、お名前、郵便番号、住所をお書き添えの上、ご連絡ください。
お待ちしております。

鈴木俊幸(中央大学教授)・橋口侯之介(誠心堂書店店主)による推薦文も掲載しています。

以下にPDFでも公開いたします。
http://kasamashoin.jp/shoten/hangi.pdf

-----------

70718_k.jpg

永井一彰『板木は語る』(笠間書院)
はんぎはかたる
ISBN978-4-305-70718-5 C0095
A5判・上製・カバー装・604頁
定価:本体12,000円(税別)

カバー写真●法蔵館板木蔵(協力:法蔵館)


近世出版現場の生々しい痕跡を伝える「板木」から、当時の出版事情に迫る。
第一人者が初めてまとめた、「板木」論集成。

従来注目されることのなかった板木を学術史料として位置付け、
出版研究に新しい視点を導入した成果の数々。
日本出版史必須の基本論考が遂にまとめられた。

【二十年近く板木に関わって来てつくづくと思うのは、そこには近世出版現場の生々しい痕跡が残っている、ということであった。それは、板木の仕立て方であったり、丁の収め方であったり、相版の際の板木の分け方であったり、板木再利用の有様であったり、入木のやり方であったりするのだが、それらは近世の本屋や出版に携わった職人たちが何を考え何をして来たかを私たちにストレートに語ってくれるもので、従来の出版研究がベースとして来た「版本」からは絶対に見えてこない情報である。それらの情報を手にして版本に臨んだ時、私たちはまた、近世の出版について新たな視点を持つことが可能となるに違いない。】......あとがきより

-----------
■著者紹介

永井一彰(ながい・かずあき)NAGAI Kazuaki
昭和24年岐阜県生まれ。滋賀大学教育学部卒。大谷大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。奈良大学文学部教授。博士(文学)。著書に『蕪村全集・連句編』(講談社、分担執筆)『藤井文政堂板木売買文書』(青裳堂書店)『月並発句合の研究』(笠間書院)などがある。
-----------
■ご予約・ご注文は版元ドットコムで
http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-305-70718-5.html
または、直接小社まで、メールでinfo@kasamashoin.co.jpご連絡いただいても構いません。またはこちらのフォームで、購入希望としてご連絡ください(書名・冊数・お名前・ご住所・電話番号を明記してください)。
http://kasamashoin.jp/mailform.html
-----------

【目次】

第一部●板木の意義

京都と古典文学―出版を中心に―
 1 出版都市京都 2 藤井文政堂の板木
 3 失われた板木 4 板木の学術的意義

第二部●『おくのほそ道』の板木

1 『おくのほそ道』板木の旅路
2 『おくのほそ道』蛤本(はまぐりぼん)の謎

 1 蛤本の由来 2 板木の仕立て方
 3 板木由来の乱丁本 4 小蛤本『おくのほそ道』
 5 『おくのほそ道』の題簽

第三部●「芭蕉」という利権

1 小本『俳諧七部集』
 はじめに 1 安永三年江戸京五軒版
 2 文化五年再刻京三軒版 3 文化五年京江戸五軒版
 4 安政四年江戸大坂九軒版 付 寛政版七部集の配列
2 小本『俳諧七部集』の重板
 はじめに 1 重版A本
 2 重版C本 3 重版B本
 4 重版D本 5 掌中俳諧七部集
 6 天保校正俳諧七部集 7 掌中本覆刻版
 8 弘化四年版横本 9 弘化二年版袖珍本
 10 嘉永四年版横本 おわりに
3 『七部大鏡』の版権
 はじめに 1 『西国俳諧七部集』の一件
 2 『七部大鏡』の版権 付『続猿蓑注解』
 3 『芭蕉翁句解参考』 おわりに

第四部●入木(いれき)

1 梅竹堂会所本の入木撰
 1 会所梅竹堂 2 梅竹堂会所本の入木撰
2 『芭蕉翁発句集』の入木
 はじめに 1 『おくのほそ道』と『芭蕉翁発句集』
 2 『芭蕉翁発句集』の板木の入木
3 板木二題―厚さ・入木―
 1 板木の厚さ 2 入木
4 『山家集抄』の入木
 はじめに 1 版本書誌
 2 残存板木一覧 3 板木の伝来
 4 成立 5 『山家集抄』の入木
 6 他の例

第五部●版権移動・海賊版・分割所有

1 『笈の小文』の板木
 1 『笈の小文』の版本・板木 2 『芭蕉翁/奥細道 拾遺』
 3 『笈の小文』の版権 4 『発句題林集』のこと
 5 平野屋版『笈の小文』は初版か
2 『奥細道菅菰抄』の板木
 はじめに 1 『奥細道菅菰抄』の版本と板木
 2 天明の大火と井筒屋の罹災 3 大火後の井筒屋
 おわりに
3 『七部解』と『七部木槌』
4 『冬の日注解』の板木

 1 『冬の日注解』の版本 2 『冬の日注解』の板木
 3 刊記の不審
5 竹苞楼の板木―狂詩集・狂文集を中心に―
 はじめに 1 板木により判明する事実
 2 『太平楽府』の板木 3 『太平楽府』の重版の一件
 4 『太平楽府』の版本
6 板木の分割所有
 はじめに 1 好古小録 2 好古日録
 3 禁秘御鈔階梯 4 茶経
 5 茶経詳説 6 百家―行伝
 7 秘伝花鏡 8 謝茂秦詩集
 おわりに
7 『四鳴蝉』の板木

第六部●板木は語る

1 佛光寺の板木
2 慶安三年版『撰集抄』の板木

 はじめに 1 『撰集抄』の板木
 2 慶安三年版の板木 おわりに
3 俳書の板木
 はじめに 1 『花段綱目』の内容と諸版本
 2 『花段綱目』の板木 3 俳書の内容
 4 『花段綱目』三刻本の版元
4 一茶等「七評ちらし」の板木 
 1 十評発句集 2 一茶等「七評ちらし」
 3 一茶・石海両評奉額句合

あとがき

-----------
【推薦文】

揺るぎない確論の美しさ
鈴木俊幸(中央大学教授)

 「芭蕉という利権」という論考を読了した時の爽快感は忘れない。脳までつながった鼻詰まりが、一瞬にしてすっきり通ったような感覚を覚えた。私の中で形を取らずにもやもやくすぶっていたものが、鋭く確実な線でここに描き出されていた。それは理屈ではなく、実証の積み重ねがおのずと浮かび上がらせたものであった。かっこいいと思った。そもそも表題からして意図が明快でスマートなのであるが、それを裏切らないものがここにあった。

 以前から永井論文は愛読するところで、ここまでやるかというくらいの諸本追跡の徹底が圧倒的迫力をもって私を揺さぶってきた。この「芭蕉という利権」も、手口は同じなのであるが、ここに鮮やかに描き出されたものは、これまでの芭蕉研究では、あるいは文学研究では捉えられなかった、もしくは見ないふりをしてきたものであった。

 「芭蕉」を時代における文化現象として捉える冷静な眼差し、その文化現象が時代に何をもたらし、その推移が何を物語るかという大きな歴史的視点と実証を積み重ねる揺るがない手際とによってものされたこの論考に、近世文学研究の大きな前進、あるいは飛躍を見た思いがしたのである。

 『板木は語る』とは、これまたクールな書名である。しかし、じつは板木は寡黙である。ほうっておいて向こうから語りかけてくるような生やさしいものではない。著者が彼らの語るところを聞き取れたのは、膨大な経験とそれに基づく鋭い追求にたまらず彼らが口を割ったからである。

 鋭い筋が一本すっと通った諸論考は苦労をあからさまに語らないが、板木の調査はとてもしんどい。体力と根気が無いと続くまい。目の詰まった桜材は予想以上に重量があり、それを扱う時の無理な体勢は、腰やら肩やらにダメージを徐々に蓄積していく。夏の力仕事で汗ばんだ体は、板木から舞いあがる墨の粉を吸着し、下着まで黒ずむ。もちろん、鼻孔も真っ黒である。冬場、思いの外冷たくなっている板木は氷の板とまごうばかりで、手先が徐々にしびれてくる。私のわずかな経験に照らしても、容易に想像できる。おそらく著者は、彫工や摺師が一生涯扱う以上の板木を相手にしたであろう。それがあって始めて板木の語るところを聞き取れたのである。

 板木を研究対象とした場合、それによって摺り出された諸本の精査がなくてはならない。その際の諸本精査の眼力は、板木が語りかけてくるまでに蓄積された経験によって培われたものであった。本から板木を考え、また板木から本を考えるという気の遠くなるような往復運動から盤石の永井学が成立している。

 途方もない時間と労力をかけたという意味で本書は紛れもない労作なのであるが、むしろその労が実現している確論の美しさのほうを称えるべきである。知らなかったでは済まされないところにわれわれは引きずり出された。この確論は、今後さまざまな研究領域において花を咲かせ実を結ぶ頼りとなるであろう。

※web上での読みやすさに配慮し適宜改行を入れました。

-----------
【推薦文】

板木から出版の実情が見えてくる
橋口侯之介(誠心堂書店店主)

 江戸時代の出版は、木版印刷によって発展した。その版本(はんぽん)は今も数多く残されている。しかし、印刷原版である板木そのものは近代以降の印刷方法の変化によって、無用の長物とみなされ、研究もされないまま大半が失われてしまった。空襲や震災のために焼けてしまったものも多いが、薪や加工品にされたこともあって絶滅の危機にあった。

 きっかけは、ある木工店にあった千百枚の板木が古書店に売られたことからだった。それを見つけた著者が、奈良大学などに納入するようにしたことで生き返った。その後、二百年以上続く書店から続々と板木の存在が明らかになり、研究機関に渡る契機となった。

大量の板木を調べると、出版印刷の経過がわかる好資料だと気づいた。出版現場の情報が生々しい状態で残っているところに学術的価値があると著者はいう。そこから板木を研究の資料として活用する道が開けたといえる。

 本書はその板木から見えてくる本屋と出版の実態を多くの実例で紹介したもので、中にはたった一枚の板木から、残存する文字史料を加えながら発行の経過を跡づけた例もある。史料と板木、それに実物の版本をつきあわせて研究ができるのは幸せなことである。これまで見過ごされてきた出版の実情が次々と明らかになる可能性があるのだ。

 当時の本屋にとって板木は財産で、板株という権利になっていた。だから、海賊版(重板(じゆうはん))や一部模倣したような本(類板(るいはん))が市場に出ることを警戒し、その対策に腐心をした。狂詩の出版で知られる京都の書林・銭屋惣四郎(現竹苞書楼(ちくほうしよろう))からも大量の板木とその関係の文書史料が納入されたが、それらを付き合わせていくと、たとえば、銭屋の稼ぎどころだった狂詩『太平楽府(たいへいがふ)』の海賊版が出たときの対処法がわかった。相手方の板木を没収して、押さえておいたのだ。その海賊版の板木も残っていた。

 近世出版の特殊な形態には、相合板(あいあいはん)という複数の店による版権の共有があった。近世後期は、過半の出版物がそうであった。しかし、具体的な本屋間の取り決め方は文字史料からだけではわかりにくかった。本書では板木が残っていたおかげで、実際に権利をどのように持ち合うのかを明解に提示することができた。出版研究のために大きな前進である。

 板木は図書館・博物館など書誌情報の現場にも大いに役立つ材料となるだろう。板木データベースも公開され、充実しつつある。将来が楽しみである。

 近代以降の活版印刷では組版がそのまま残ることはない。コンピュータによる本づくりでも訂正前の履歴は残りにくい。そのために印刷の元にまでさかのぼって研究することは不可能に近い。しかし、板木には校正をした痕跡までわかるなど細かい実態が見える。本書では、板木を材料として活用することで新たな問題を提起し、出版研究の将来的な展望を示している。もっと早くから、このことに気づくべきだった。そうすれば、数多くの板木が保護されたであろうに。

※web上での読みやすさに配慮し適宜改行を入れました。

-----------


●グーグル提供広告