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2011年6月20日

 記事のカテゴリー : 新刊案内

●辰巳正明著『山上憶良』[コレクション日本歌人選](笠間書院)

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7月8日発売予定です(取次搬入)。

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コレクション日本歌人選 002
山上憶良[辰巳正明著]

ISBN978-4-305-70602-7 C0092
定価:本体1,200円(税別)
四六判・並製・122ページ

うたの森に、ようこそ。
柿本人麻呂から寺山修司、塚本邦雄まで、日本の代表的歌人の秀歌そのものを、堪能できるように編んだ、初めてのアンソロジー、全六〇冊。「コレクション日本歌人選」の第5回配本、山上憶良です。

憶良は、「妻への愛とは何か」「子への愛とは何か」「夫に対する愛とは何か」ということをかなり雄弁に語っています。同時に、そうしたものへの愛も、つねに死によって悲しみにかえられてしまうという運命観もうかがえます。----中西進

山上憶良(やまのうえのおくら)
人も知る万葉「貧窮(ひんきゅう)問答歌」(万葉巻五)の作者。民衆の心に寄り添って自分のごとく悲しんでうたい、貴族の最下位であったが、大伴旅人にその大陸的で自由な詩才を愛された。歌人としての才能のみではなく、漢詩人であると同時に日本初の評論家でもあった。当時としては珍しく思想詩人としての視野を持っていたことが特筆される。後代にもこの憶良に匹敵する歌人はそうそうはいない。帰化人の子孫ではないかという魅力的な説もあって、和歌史における憶良の存在は無視できぬものがある。

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●シリーズ全体像を説明したPDFはこちら
http://kasamashoin.jp/shoten/kajinsen.pdf
シリーズ特設サイトはこちら
●「コレクション日本歌人選」パンフレット(上記PDF)を無料でお送りいたします。
※こちらのフォームで、「コレクション日本歌人選」パンフレット、希望として、ご請求ください。
http://kasamashoin.jp/mailform.html
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【著者プロフィール】
辰巳正明 Tatsumi Masaaki
* 1945年北海道生。
* 成城大学大学院修了。
* 現在 國學院大學教授。
* 主要著書
『万葉集と中国文学』(第一・二)『詩の起源』『詩霊論』『折口信夫』『万葉集に会いたい。』『短歌学入門』(以上、笠間書院)『万葉集と比較詩学』(おうふう)『悲劇の宰相長屋王』(講談社)

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■ご予約・ご注文は版元ドットコムで
http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-305-70602-7.html
。または、直接小社まで、メールで info@kasamashoin.co.jp ご連絡いただいても構いません。またはこちらのフォームで、購入希望としてご連絡ください(書名・冊数・お名前・ご住所・電話番号を明記してください)。
http://kasamashoin.jp/mailform.html
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【目次】
01 いざ子ども早く日本へ大伴の御津の浜松待ち恋ひぬらむ
02 天翔りあり通ひつつ見らめども人こそ知らね松は知るらむ
03 憶良らは今は罷らむ子泣くらむその彼の母も吾を待つらむそ
04 愛河ノ波浪ハ已先ニ滅エ、苦海ノ煩悩モ亦結ボホルコトナシ。
  従来コノ穢土ヲ厭離ス。本願ハモチテ生ヲ彼ノ浄刹ニ託セム。
05 大君の 遠の朝廷と
  しらぬひ 筑紫の国に
  泣く子なす 慕ひ来まして
  息だにも いまだ休めず
  年月も いまだあらねば
  心ゆも 思はぬ間に
  うち靡き 臥しぬれ
  言はむすべ 為むすべ知らに
  石木をも 問ひさけ知らず
  家ならば 形はあらむを
  うらめしき 妹の命の
  我をばも 如何にせよとか
  鳰鳥の 二人ならびゐ
  語らひし 心背きて
  家さかりいます
06 家に行きて如何にか吾がせむ枕づく妻屋さぶしく思ほゆべしも
07 愛しきよしかくのみからに慕ひ来し妹が情の術もすべなさ
08 悔しかもかく知らませばあをによし国内ことごと見せましものを
09 妹が見し楝の花は散りぬべしわが泣く涙いまだ干なくに
10 大野山霧立ち渡るわが嘆く息嘯の風に霧立ちわたる
11 父母を 見れば尊し
  妻子見れば めぐし愛し
  世の中は かくぞ道理
  黐鳥の かからはしもよ
  行方知らねば
  穿沓を 脱き棄る如く
  踏み脱きて 行くちふ人は
  石木より 生り出し人か
  汝が名告らさね
  天へ行かば 汝がまにまに
  地ならば 大君います
  この照らす 日月の下は
  天雲の 向伏す極み
  谷蟆の さ渡る極み
  聞し食す 国のまほらぞ
  かにかくに 欲しきまにまに
  然にはあらじか
12 瓜食めば 子ども思ほゆ
  栗食めば まして思はゆ
  何処より 来りしものそ
  眼交に もとな懸りて
  安眠し寝さぬ
13 銀も金も玉も何せむに勝れる宝子に及かめやも
14 世間の 術なきものは
  年月は 流るる如し
  取り続き 追ひ来るものは
  百種に 迫め寄り来る
  少女らが 少女さびすと
  唐玉を 手本に纏かし
  〔或いはこの句、白栲の 袖ふりかはし 紅の 赤裳裾引きといへるあり〕
  同輩児らと 手携りて
  遊びけむ 時の盛りを
  留みかね 過し遣りつれ
  蜷の腸 か黒き髪に
  何時の間か 霜の降りけむ
  紅の〔一は云はく、丹の穂なす〕面の上に
  何処ゆか 皺が来りし
  〔一は云はく、常なりし 笑まひ眉引き 咲く花の 移ろひにけり 世間は かくのみならし〕
  大夫の 男子さびすと
  剣太刀 腰に取り佩き
  猟弓を 手握り持ちて
  赤駒に 倭文鞍うち置き
  はひ乗りて 遊びあるきし
  世間や 常にありける
  少女らが さ寝す板戸を
  押し開き い辿りよりて
  真玉手の 玉手さし交へ
  さ寝し夜の 幾許もあらねば
  手束杖 腰にたがねて
  か行けば 人に厭はえ
  かく行けば 人に憎まえ
  老男は かくのみならし
  たまきはる 命惜しけど
  せむ術も無し
15 常磐なすかくしもがもと思へども世の事なれば留みかねつも
16 春さればまづ咲く宿の梅の花独り見つつや春日暮さむ
17 松浦県佐用比売の子が領巾振りし山の名のみや聞きつつ居らむ
18 天飛ぶや鳥にもがもや都まで送り申して飛び帰るもの
19 人もねのうらぶれ居るに竜田山御馬近づかば忘らしなむか
20 天離る鄙に五年住まひつつ都の手ぶり忘らえにけり
21 吾が主の御霊給ひて春さらば奈良の都に召上げ給はね
22 うち日さす 宮へ上ると
  たらちしや 母が手離れ
  常知らぬ 国の奥処を
  百重山 越えて過ぎ行き
  何時しかも 京師を見むと
  思ひつつ 語らひ居れど
  己が身し 労しければ
  玉桙の 道の隈廻に
  草手折り 柴取り敷きて
  国に在らば 父とり見まし
  家に在らば 母とり見まし
  世間は かくのみならし
  犬じもの 道に臥してや
  命過ぎなむ〔一は云はく、わが世過ぎなむ〕
23 たらちしの母が目見ずて鬱しく何方向きてか吾が別るらむ
24 常知らぬ道の長手をくれくれと如何にか行かむ糧は無しに
  〔一は云はく、乾飯は無しに〕
25 風雑り 雨降る夜の
  雨雑り 雪降る夜は
  術もなく 寒くしあれば
  堅塩を 取りつつしろひ
  糟湯酒 うち啜ろひて
  咳かひ 鼻びしびしに
  しかとあらぬ 鬚かき撫でて
  我を措きて 人は在らじと
  誇ろへど 寒くしあれば
  麻衾 引き被り
  布肩衣 有りのことごと
  服襲へども寒き夜すらを
  我よりも 貧しき人の
  父母は 飢ゑ寒からむ
  妻子どもは 乞ふ乞ふ泣くらむ
  この時は 如何にしつつか
  汝が世は渡る
  天地は 広しといへど
  吾が為は 狭くやなりぬる
  日月は 明しといへど
  吾が為は 照りや給は
  人皆か 吾のみや然る
  わくらばに 人とはあるを
  人並に 吾も作れるを
  綿も無き 布肩衣の
  海松の如 わわけさがれる
  襤褸のみ 肩にうち懸け
  伏廬の 曲廬の内に
  直土に 藁解き敷きて
  父母は 枕の方に
  妻子どもは 足の方に
  囲み居て 憂へ吟ひ
  竈には 火気ふき立てず
  甑には 蜘蛛の巣懸きて
  飯炊く 事も忘れて
  鵼鳥の 呻吟ひ居るに
  いとのきて 短き物を
  端截ると 云へるが如く
  楚取る 里長が声は
  寝屋戸まで 来立ち呼ばひぬ
  かくばかり 術無きものか
  世間の道
26 世間を憂しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば
27 俗道ノ変化ハ猶ホ目ヲ撃ツガゴトク、人事ノ経紀ハ臂ヲ申ブルガゴトシ。
  空シク浮雲ト大虚ヲ行キ、心力共ニ尽キテ寄ルトコロナシ。
28 たまきはる 現の限りは
  〔瞻浮州の人の寿の一百二十年なるを謂ふ〕
  平けく 安くもあらむを
  事も無く 喪も無くあらむを
  世間の 憂けく辛けく
  いとのきて 痛き傷には
  鹹塩を 灌くちふが如く
  ますますも 重き馬荷に
  表荷打つと いふことの如
  老いにてある わが身の上に
  病をと 加へてあれば
  昼はも 息衝きあかし
  年長く 病みし渡れば
  月累ね 憂へ吟ひ
  ことことは 死ななと思へど
  五月蠅なす 騒く児どもを
  打棄てては 死は知らず
  見つつあれば 心は燃えぬ
  かにかくに 思ひわづらひ
  哭のみし泣かゆ
29 術もなく苦しくあれば出で走り去ななと思へど児らに障りぬ
30 荒栲の布衣をだに着せかてにかくや嘆かむせむ術をなみ
31 世の人の 貴び願ふ
  七種の 宝もわれは
  何為むに
  わが中の 生れ出でたる
  白玉の わが子古日は
  明星の 明くる朝は
  敷栲の 床の辺去らず
  立てれども 居れども
  共に戯れ
  夕星の 夕になれば
  いざ寝よと 手を携わり
  父母も 上は勿放り
  三枝の 中にを寝むと
  愛しく 其が語らへば
  何時しかも 人と成り出でて
  悪しけくも よけくも見むと
  大船の 思ひ憑むに
  思はぬに 邪風の
  にふぶかに 覆ひ来ぬれば
  為む術の 方便を知らに
  白栲の 手襁を掛け
  まそ鏡 手に取り持ちて
  天つ神 仰ぎ乞ひ祈み
  地つ神 伏して額づき
  かからずも かかりも
  神のまにまにと
  立ちあざり われ乞ひ祈めど
  須臾も 良けくは無しに
  漸漸に 容貌くづほり
  朝な朝な 言ふこと止み
  たまきはる 命絶えぬれ
  立ち踊り 足摩り叫び
  伏し仰ぎ 胸打ち嘆き
  手に持てる 吾が児飛ばしつ
  世間の道
32 稚ければ道行き知らじ幣は為む下辺の使負ひて通らせ
33 士やも空しくあるべき万代に語り続くべき名は立てずして
34 天の川相向き立ちてわが恋ひし君来ますなり紐解き設けな
35 ひさかたの天の川瀬に船浮けて今夜か君が我許来まさむ
36 秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七種の花 その一
37 萩の花尾花葛花瞿麦の花 女郎花また藤袴朝貌の花 その二
38 大君の遣さなくに情出に行きし荒雄ら沖に袖振る
39 荒雄らは妻子の産業をば思はずろ年の八歳を待てど来まさず
歌人略伝
略年譜
解説「生きることの意味を問い続けた歌人 山上憶良」(辰巳正明)
読書案内
【付録エッセイ】「士」として歩んだ生涯--みずからの死(中西進)



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