平井啓子著『式子内親王』[コレクション日本歌人選](笠間書院)

5月2日発売予定です(取次搬入)。
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コレクション日本歌人選 010
式子内親王[平井啓子著]
ISBN978-4-305-70610-2 C0092
定価:本体1,200円(税別)
四六判・並製・124ページ
うたの森に、ようこそ。
柿本人麻呂から寺山修司、塚本邦雄まで、日本の代表的歌人の秀歌そのものを、堪能できるように編んだ、初めてのアンソロジー、全六〇冊。「コレクション日本歌人選」の第3回配本、式子内親王です。
そのしみじみと見つめる物思いの中には、自己をも肯定せず、見ている現実をも肯定できない式子のかなしみがあるように思う。ーー馬場あき子
式子内親王(しょくしないしんのう)
「しきし」とも読む。『百人一首』に「玉の緒(を)よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする」で知られる作者。後白河天皇の皇女に生まれ、若き日を賀茂斎院として過ごす。王朝崩壊から武家社会へ変革する政治の激動期に、母の死、弟以仁王(もちひとおう)の横死(おうし)に遭(あ)う。穏やかでない環境の中で歌を藤原俊成に学び、中世和歌の新風を感じさせる繊細優艶な作品を残す。高雅な精神から生まれた歌は、呪詛事件に巻き込まれるなど実生活の混濁から抜きんでた清澄(せいちょう)なもので、和歌史上に燦然(さんぜん)と耀(かがや)く。藤原定家との交流に材をとった能「定家葛(ていかかづら)」が今に伝わる。
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【著者プロフィール】
平井啓子(ひらい・けいこ)
*1947年岡山生。
*ノートルダム清心女子大学大学院文学研究科博士後期課程修了。
*主要著書・論文
『式子内親王の歌風』(翰林書房)
「ノートルダム清心女子大学附属図書館蔵『後水尾院御集』紹介」(『清心語文』第3号)
「黒川真頼頭注『新勅撰和歌集抄』(弄花軒祖能)–〈翻字〉」(『清心語文』第7号)
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【目次】
01 色つぼむ梅の木の間の夕月夜はるのひかりを見せそむるかな
02 山深み春とも知らぬ松の戸にたえだえかかる雪の玉水
03 ながめつる今日はむかしになりぬとも軒端の梅はわれを忘るな
04 いま桜咲きぬとみえて薄ぐもり春にかすめる世のけしきかな
05 八重にほふ軒端の桜うつろひぬ風よりさきに訪ふ人もがな
06 花はちりてその色となくながむればむなしき空に春雨ぞふる
07 ふるさとの春を忘れぬ八重桜これや見し世に変らざるらん
08 忘れめや葵を草にひきむすび仮寝の野辺の露のあけぼの
09 まどちかき竹の葉すさぶ風の音にいとど短かきうたたねの夢
10 夕立の雲もとまらぬ夏の日のかたぶく山にひぐらしの声
11 たそがれの軒端の荻にともすればほにいでぬ秋ぞ下にこととふ
12 秋風を雁にやつぐる夕ぐれの雲ちかきまでゆく蛍かな
13 うたたねの朝けの袖にかはるなりならす扇の秋のはつ風
14 ながめわびぬ秋よりほかの宿もがな野にも山にも月やすむらん
15 あともなき庭の浅茅にむすぼほれ露の底なる松虫の声
16 千たび打つ砧の音に夢さめてもの思ふ袖の露ぞくだくる
17 更けにけり山の端ちかく月さえて十市の里に衣うつこゑ
18 桐の葉も踏み分けがたくなりにけり必ず人を待つとなけれど
19 秋こそあれ人はたづねぬ松の戸をいくへも閉ぢよ蔦のもみぢば
20 わが門のいなばの風におどろけば霧のあなたに初雁のこゑ
21 風さむみ木の葉晴れゆくよなよなに残るくまなき庭の月影
22 みるままに冬はきにけり鴨のゐる入江の水ぎは薄ごほりつつ
23 さむしろの夜半の衣手さえさえてはつ雪しろし岡のべの松
24 身にしむは庭火の影もさえのぼる霜夜の星のあけがたの空
25 天のしためぐむ草木のめも春にかぎりもしらぬ御代の末々
26 松がねの雄島が磯のさよ枕いたくなぬれそ海女の袖かは
27 たそがれの荻の葉風にこのごろの訪はぬならひを打ち忘れつつ
28 玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする
29 忘れてはうちなげかるる夕べかなわれのみしりてすぐる月日を
30 我が恋はしる人もなしせく床の涙もらすな黄楊のを枕
31 しるべせよ跡なき波に漕ぐ舟のゆくへもしらぬ八重の潮風
32 夢にてもみゆらむものを嘆きつつうちぬる宵の袖のけしきは
33 逢ふことをけふ松が枝の手向草幾夜しをるる袖とかは知る
34 君待つと寝屋へもいらぬ槙の戸にいたくなふけそ山の端の月
35 さりともとまちし月日ぞうつり行く心の花の色にまかせて
36 生きてよも明日まで人もつらからじこの夕暮を訪はばとへかし
37 みたらしや影絶えはつる心地して志賀の浪路に袖ぞぬれにし
38 ほととぎすその神山の旅枕ほの語らひし空ぞわすれぬ
39 今はわれ松の柱の杉の庵に閉づべきものを苔深き袖
40 斧の柄のくちし昔は遠けれど有りしにもあらぬ世をもふるかな
41 暁のゆふつけ鳥ぞあはれなるながき眠りをおもふ枕に
42 暮るるまも待つべき世かはあだし野の末葉の露に嵐立つなり
43 日に千度心は谷になげはててあるにもあらずすぐる我が身は
44 さりともと頼む心は神さびて久しくなりぬ賀茂の瑞垣
45 静かなる暁ごとに見わたせばまだ深き夜の夢ぞかなしき
歌人略伝
略年譜
解説「斎院の思い出を胸に 式子内親王」(平井啓子)
読書案内
【付録エッセイ】花を見送る非力者の哀しみ–作歌態度としての<詠め> の姿勢(抄)(馬場あき子)