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2006年7月18日

 記事のカテゴリー : 受賞図書, 書評・パブリシティ情報

●朝日新聞「ひと」欄に、『日本文学色彩用語集成』の著者、伊原昭氏が登場

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2006年7月16日(日)の朝日新聞「ひと」欄に、
『日本文学色彩用語集成』の著者、伊原昭氏が登場いたしました。
タイトルは、
*半世紀をかけ「日本文学色彩用語集成」をまとめた研究者*
です。ぜひご覧ください。

なお、本書は、第一回・ビューティサイエンス学会賞を受賞いたしました。

本の紹介と、推薦文(大岡信・永井路子・中野三敏・山中裕・松崎仁)、
著者による、「完結にあたって」を以下、掲載いたします。 

『日本文学色彩用語集成 近世』
2006年03月 発行 
ページ 1372P・A5 
定価:本体28,000円(税別)
ISBN 4-305-40057-X

40057.jpg

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伊原昭●日本色彩用語集成・近世

●本書のパンフレットをダウンロード(PDFファイル・デスクトップに保存してください)
日本文学色彩用語集成・パンフレット【裏面】

日本文学色彩用語集成・パンフレット【表面】

【著者プロフィール】
伊原昭(いはら・あき)
大正6年10月24日、鎌倉市生まれ。東京女子大学卒業後、日本大学大学院文学研究科修了。国立国会図書館主査、和洋女子大学、梅光女学院大学を経て、現在梅光女学院大学名誉教授。文学博士。

【著書】
『色彩と文学--古典和歌をしらべて--』(桜楓社出版、昭和34)、『萬葉の色相』(塙書房、昭和39)、『平安朝文学の色相--特に散文作品について--』(笠間書院、昭和42)、『色彩と文芸美--古典における--』(笠間書院、昭和46)、『日本文学色彩用語集成--中世--』(笠間書院、昭和50)、『日本文学色彩用語集成--中古--』(笠間書院、昭和52)、『古典文学における色彩』(笠間書院、昭和54)、『日本文学色彩用語集成--上代一--』(笠間書院、昭和55)、『平安朝の文学と色彩』(中央公論社、昭和57)、『日本文学色彩用語集成--上代二--』(笠間書院、昭和61)、『万葉の色--その背景をさぐる』(笠間書院、平成元年)、『文学にみる日本の色』(朝日新聞社、1994)、『王朝の色と美』(笠間書院、1999)

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日本文学色彩用語集成を推薦します


●大岡 信
『日本文学色彩用語集成』の完成を祝う

『日本文学色彩用語集成』の最終巻にあたる『近世』篇がついに完成した。「上代一」「上代二」「中古」「中世」の四冊に続く五冊目の完成によって、三十有余年にわたる粒々辛苦の仕事が、ついに完結したわけで、独力でこの前人未踏の仕事を完成された伊原昭さんに心からの敬意を捧げ、大きな祝福の拍手を送りたい。
「色彩用語」と一口に言うが、われわれは日常生活の中で色彩に関わる言葉を用いる場合、それらを厳密に定義して使っているとはいえまいことが多い。アカとかクロとかアオとか、多くは大雑把な用語で日常生活をいとなんでおり、それもさし障りを生ずるということもあまりない。そのため、たとえば本書で「律文篇」と「散文篇」とが別々の項目に分けられている理由が、「色彩用語が両者において異なるところが多いため」であると説明されると、はッと目がさめたようになる。
「広く色彩世界を探索するに役立つ」本を作りたいという著者の悲願は、本書「近世」篇の完成によって、めでたく達せられた。著者に感謝と祝いの言葉を捧げたい。

●永井 路子
美意識への旅人、伊原先生!!

伊原先生はふしぎな方——。目くるめくばかりの色彩の花園に立ちよどみ、そう思わずにいられません。先生はなんと丹念に色の名前を摘みあげられたことか。しかも御著作は単なる色の名の辞典ではなく、その色たちが古典の中にどんな形で登場するかを、綿密に拾いあげられました。
そうなのです!色はその中で命を与えられ、輝き、翳りのすべてを語るのです。
世界を見渡してみると、西欧の中世騎士が鋼鉄色だけの甲冑をまとうのに比し、日本の武士は、鮮やかな緋緘・小櫻緘などの鎧をつけて出陣しています。色を手がかりに、歴史そのものまで考えさせられます。 
すばらしい御着眼と三十有余年の御研究に恩恵を頂いた一人として、改めて敬意と感謝を捧げます。
母の世代は、ここに挙げられた色の名を、さりげなく使っていました。とき色、あさぎ、お納戸、銀鼠……。それがいつか忘れられ、サーモンピンク、ターコイズブルーなどの外来の名前ばかり通用するこのごろです。
もっと深く、デリケートで豊かな日本の色の名を見直すために、美意識への旅人、伊原先生の御著書を、今こそ読んでいただきたいものです。

●中野 三敏
他に例を例を見ないユニークな成果

民族固有の色彩感覚というものがあることは、二・三度でも外国旅行を体験すれば、誰しも感じる所、また僅かでも古典に触れゝば、時の推移に応じて一国の内にも微妙な色彩感覚の違いを味わうこと屡である。そしてこの時間軸に沿った違いは、それぞれの文学作品に最も良く反映されるに違いないし、まして彩色刷りという出版技術を持つに至った近世中期以降ともなれば、読書人の色彩感覚は一層研ぎ澄まされたであろう事は容易に推測し得る。その時、色彩表現は意識するとしないとに関わらず、作者の心の襞を表明する極めて鋭利な道具となる。
本書はそうした色彩用語の集成を、上代よりして中古・中世と徹底して行った末に近世に及んだ、他に類を見ないユニークな成果である。その集収・採録の方法はあく迄本文重視の原則に徹し、一切の解釈や説明を加えない。とにかく用例の豊富さのみを志して潔よく、用語・用例事典としての範を示した、文字通りの畢生の労作である。その代り附録として極めて行届いた「色彩用語解説」が設けられている辺りにも、著者の用意の周到さが感じられて、これだけでも近世文芸の理解に資する所は絶大である。その労に対し深甚の謝意を捧げたい。

●山中 裕
古記録(和風漢文の日記)・古文書などを読む場合にも重要

「日本文学色彩用語集成」。本書については、上代一・上代二・中古・中世の四冊がすでに完成されて、今日に至るまでに多大の評価をよんでいる。今回は、その最終回の「近世」である。日本人の美意識の本質である色を、これ程、こまかに分析して用例を悉く網羅した書物は、未だ嘗てなく、実証的に、用例を古典・和歌を始め、あらゆる文学作品から丁寧に、1「律文篇」、2「散文篇」とに分け、わかり易く配列されていることに、先ず、賞讃したい、その内容は、まことにこまかに年代順に並べてあり、色と色名から簡単に引くことができる辞書風な形式として区分されている。これだけ大部のものでありながら、一目瞭然と見られる事が有難い。それぞれの文学作品の色彩から、その色彩のあり方を正確に詳細に把握し、その色彩によって成り立っている作品の内容がどのような主題があるか、著者は、なにを目的として作品を造り上げているか、その作品の目的と本質、および著者の思想などを解明することが出来るところに、本書の大いなる特質が存するとおもわれる。色彩によって文学の本質をとらえる。これは、文学のみでなく、古記録(和風漢文の日記)・古文書などを読む場合にも重要なところであり、また、有職故実学の研究の上にも、本書の功績は大きく、これらの分野にも本書の完成は今後の発展を期待できるところ多大である。

●松崎 仁
色彩用語への最上の手引

著者伊原昭さんは、一九五九年刊行の『色彩と文学——古典和歌をしらべて——』に始まる多数の著書によって、色彩と古典文学との関連を探究する道を切り開いてこられたパイオニアである。
 伊原さんの研究は、古典文学作品に現れている色彩用語を前後の文章ごとカード化することから始まり、その目標は、作中人物なり情景なりが、しかじかの色彩表現を伴うことによってどのような印象・情動を読者に与えるかを探り、そこに生まれる「色彩用語の文芸性」を究明することであった。
それは数十年にわたる色彩語探究一筋の道であったとお見受けするが、その畏敬すべき研究の基盤は厖大な色彩用語の集成にあり、それは既に上代から中世に至る四巻の『色彩用語集成』として刊行されている。このたび刊行の近世篇は、近世の豊かな色彩世界を、色彩の周辺にまで眼配りしつつ詳細に把握しようとする資料篇である。その行届いた眼配りと読みの深さから、我々が色彩用語と気付かなかった語彙にも、色彩感覚が秘められていることを教えられたりする。
近世の色彩用語を知ろうとする時、本書は最上の手引となるに違いない。

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●完結にあたって 
伊原 昭


万物には形と「色」がある。
「色」という漢字には、人間にとって根元的な意義があるという。
文学の世界では、『源氏物語』(螢の巻)に語られているように、多くの作品に、さまざまなドラマが、そしてそこには多様な「色」が描かれている。五十年程前に、小著の序に高木市之助先生が「先人未到の道」と述べられたが、私は、この「色」をとりあげ、文学の本質を少しでも追求する手段としたい、と念願し続けている。
そのためには、基礎的資料が不可欠と考え、古典文学にみられる「色」を、正確に採録し収集し、文学史の年代順に大別し、『日本文学色彩用語集成』として刊行、本書「近世」をもって一往の終結をみることになった。その間に三十有余年を経たことは感慨無量である。
これまで考察してきたことから、文学に形象される「色」のあり方は、各々の時代性、その社会基盤、さらに作品の形態。作品の独自性、作者の個性等によって、いずれも異なる様相を呈している。
このことは、「色」のあり方から、文学の本質的諸構造を割出すことも可能と考えられ、今後、こうした面を究明される方が出られ、そのために、本書を資料的な面で役立てていただくことができたら、という私の微意を、ここにお汲みとりいただければ幸である。


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